ゲーム性のあるマーケティング:海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(3/3 ページ)
モノが売れない時代と言われているいるが、順調に売上を伸ばしている企業がある。商品の有効性を示し、購買欲をそそることができた企業が業績を上げている。その方法の1つがゲーム性を取り入れること。人間は好戦的動物であることは明らかなのだから。
ゲーム・メカニックス
双方向型マーケティングはソーシャルメディアを中心に増加の一途を辿っています。ゲーム戦略とソーシャルメディアを組み合わせることで、強力な融合体が生まれます。「ファンウェア」――著者のジッチャーマンが作ったマーケティング用語――とは、ゲームとゲーム機器を使って、顧客行動に影響を与え、経営目標を達成する技術です。
人々は、競争し、ゲームをプレイし、勝利することを楽しみます。また、テレビのクイズ番組の人気が示すように、他人が競争している様子を見ることも好きです。特典が小さかったり、象徴的なものだったり、実体の無い物だったりしても、ゲームに参加するプロセスを楽しみます。さらには、他人と競争するものでない時は、自分自身と競い合うことを楽しみます。
ゲーム・メカニックスとは、スクラッチゲームのように、ゲーム設計者がゲームにユーザーを誘い、プレイを促すために使用するゲームの要素です。例えば、「リーダーボード」はゲーム・メカニックスの1つで、プレイヤーの名前や彼らのゲーム内での位置を掲載したり、あるいは、ゲームの進行を記録したりするためのものです。これは、コスト効率の良い方法で、ゲームに参加したいあるいはゲームをフォローしたいと思うユーザーの気持ちを刺激することができます。
例えば、Facebookの個人のページに表示される「友達(の人数)」は、リーダーボードの1つです。Facebookは友人の獲得にゲーム的要素を取り入れてはいませんが、友人の数を競い合う現象が起きています。
建設現場に貼りだされる「190日間無事故」という看板もまた、シンプルなリーダーボードの1つです。肯定的な行動を促進するリーダーボードには他にも、ダイエットプログラムに参加している人の名前を掲示し、何キロあるいは何パーセント体重を減らしたかに応じてポイントを与えるジムのシステムなどがあります。
S&Hグリーン・スタンプは、米国で最初に導入された最も古いロイヤルティ・プログラムであり、現在使われている「ポイントシステム」の素晴らしい手本になっています。商品を購入すると切手がもらえ、切手を貯めるとグリーン・スタンプ加盟店かカタログの商品と交換することができるものでした。
ロイヤルティ・プログラムで使用されるポイントは「コイン」や「ゴールド」などさまざまな呼ばれ方をしていますが、その目的は同じです。すべてのポイントシステムは「ポイントの獲得」と「ポイントの引き換え」という2つの要素を持っています。しかし、ロイヤルティ・プログラムの効果を発揮するために現実の世界の物理的な景品を用意する必要はありません。
「バーチャル世界のお金」も、ユーザーのやる気を十分引き出すことができます。例えば、ワールド・オブ・ワークラフトのユーザーは与えられたバーチャルの金貨を使って取引することができます。このようにバーチャルの景品によって、さまざまなポイント引き換えシステムのコスト効率を上げることができるのです。
ボーイスカウトのメリットバッジのようなバッジは、ゲームの成績を目に見える形で示すものです。インターネット上で人々は、バッジの数を競い合い、Facebookなどのソーシャルネットワーキングサイトでバッジを公開します。マーケターは、バッジを使ってプレイヤーを引き付け、参加してくれたプレイヤーに特典を与えることで、消費者行動に影響を与えることができます。
また、レベルやステータスといったゲーム・メカニックスを利用して消費者の活動に影響を与える事も出来ます。大きく印象的な特典はメディアの注目を集めることができますし、小さいもの、あるいはバーチャルのものは、長い期間に渡って顧客ロイヤルティを生み出すことができます。
ゲームには、勝つためのスキルを必要とするものと、宝くじのように偶然と運に左右されるものがあります。賭けのゲームは、賭けに参加するために、チケットの購入や用紙の記入などシンプルな作業をする必要があるものがほとんどで、中には主催者が無作為に勝者を選ぶものもあります。スロットマシーンには特別なスキルは必要なく、無作為のサイクルで賞金が支払われます。
心理学者は、この種のゲームに対するプレイヤーの中毒を「道具的条件付け」と呼んでいます。人は賞品を勝ち取ることを好みます。マーケターはこの前提を活用し、特定の行動に対し見返りを与えることができます。ただし、ゲーム設計者はシステムの裏をかこうとする人と闘わなければなりません。
ここの項目を見てはっとしました! Facebookの友達数にしても、ポイント集めにしても、すべてが無意識に行なっている競争であることを再認識しました。確かにそれは自己満足の世界かもしれませんが、そうしたゲーム性を喚起してしまう戦略こそがマーケティングに必要なのでしょう。
著者紹介
ゲイブ・ジッチャーマンは、beamME社のCEOです。ジョスリン・リンダーは、「The Purity Test」および「Fake a Death in the Library」の著者です。
プロフィール:鬼塚俊宏ストラテジィエレメント社長
経営コンサルタント(ビジネスモデルコンサルタント・セールスコピーライター)。経営コンサルタントとして、上場企業から個人プロフェッショナルまで、420社以上(1400案件以上)の企業経営を支援。特に集客モデルの構築とビジネスモデルプロデュースを得意とする。またセールスコピーライターという肩書も持ち、そのライティングスキルを生かしたマーケティング施策は、多くの企業を「高収益企業」へと変貌させてきた。
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