真偽を見極めろ――「リーダーシップ 6つの試練」:経営のヒントになる1冊
古今東西、リーダーシップの重要性が叫ばれている。しかしながら、あらゆるリーダーシップが正しいわけではないという。その理由とは?
世界最高峰のリーダー養成機関「ハーバード・ケネディスクール」で好評を博している「グローバル化する世界で実践するリーダーシップ」。同コースの講師で、本書の著者ディーン・ウィリアムズ氏は、自らを「道産子」と称す。18歳のときに初めて日本を訪れ、1980年代には博士論文執筆のために松下政経塾で過ごした。
日本をこよなく愛す一方、世界各国の大統領アドバイザー、一流企業のコンサルタント、そして現在はケネディスクールで教鞭をとる異色のキャリアの持ち主である氏の処女作が、本書『リーダーシップ 6つの試練』だ。
リーダーシップに関する書籍は世の中にあふれている。「いまこそリーダーシップの時代だ」と、その必要性が声高に叫ばれている。だが「すべてのリーダーシップが“正しい”とは限らない」と著者は言う。むしろ「今日、日本が現状を脱却できないでいる理由の1つが、“偽のリーダーシップ”のまん延にある」と警鐘を鳴らす。偽のリーダーシップとは、自らの力と権威を使って、まがい物の作業を人々に課し、社会や組織の進歩から遠ざける行為だ。
では「真のリーダーシップ」とは何か――。それは、社会や組織が困難と向き合い、彼らが成功に向けて最善を尽くせるようサポートすることである。これは、「道筋を示す」「フォロワーを生み出す」といった一般的なリーダーシップの概念とは異なる。なぜなら、複雑に入り組んだ現代社会で問題や脅威に対処するには、人々が自ら責任を持って考え行動することが求められ、リーダーが「正しい解」を示して人々を先導できるほど状況は単純ではないのだ。
本書は、そうした真のリーダーシップのあり方を理解するために、アラビアのロレンス、北欧神話のオーディン、西郷隆盛、明治天皇、イエローハットの鍵山秀三郎氏など、多様な分野の古今東西のストーリーが登場する。タイトルにある「6つ試練」とは、現代社会で私たちが直面しうる状況を分類したもので、それぞれの局面に応じた「診断」と「戦略」のフレームワークを示し、試練を乗り越えるための実践的な手法を説いている。
著者は序文において、日本はいま「複合型試練」に直面しているという。困難な状況にあるのは誰の目から見ても明らかだが、その試練と対峙する私たちに向けて、力強いエールを送っている。最後にそのメッセージを紹介したい。
「読者の皆さんに知っておいてほしいことがある。それは、リーダーシップを実践し、組織、企業、共同体、国家の進歩に寄与する機会を持つことは、『大いなる名誉』に値するということだ。それは崇高な仕事だ。同時に、エキサイティングで、胸湧きおこる仕事でもある。真のリーダーにならんとするあなたの成功を祈る」
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