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スマートに相手の厚意を受け取る服装は政治だ

米国には「ドレスフォーサクセス」という言葉があります。おしゃれのためではなく、成功するために装う。そう、まさに服装は政治なのです。

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 「ステキなタイですね、良くお似合いですよ」

 「いやあこれ、たいしたものじゃないですよ、もう古くってね」

 「良い表情をしていらっしゃいますね」

 「いやあ、そんなことないですよ、そう言われると意識しちゃって、かえって困るんだよね」

  わたしはコーチなので、人に会うと自然にその人の強みに目がいくということが身に付いています。そして感じたことはできるだけ本人に伝えるようにしています。自分の強みに関して、意外と気付いていない人が多く、もったいないと感じるからです。

 その結果が冒頭の会話です。気持ちは分かるような気がします。きっと、ほとんどの人がこんなことを言われ慣れていないため、照れてしまうのでしょう。ただこの人達はどちらかというとまだ良い方で、実際にはもっとトホホ……となるような返事が返ってくる場合もあります。何も聞かなかったように無言だったり、こちらが言ったことの倍くらい自分のマイナスを言う人もいます。

 これは例えば何かプレゼントをもらった時、と考えれば分かりやすいでしょう。贈り物をする方はもちろんのこと、される方にもスマートで、かっこいい受け取りかたがあります。プレゼントをした人が「あげてよかった」と思うような。

 NYに住んでいた頃、とにかく褒められるという経験をしました。「なんてステキなドレスなの」「あなたの笑顔はなんてきれいなんでしょう!」といった具合にどんなところでもとにかく褒めてくれます。初めのころはなんとなく面くらってしまい、イエイエわたしなんか……といった態度を取ったり、褒めてもらったからには、こちらもなにか褒め返さないと悪いような気がして、ありがとうもそこそこに、あなただって素晴らしいわ、と間髪入れずに言ったりしていました。

 ある時、イメージコンサルタント協会の元会長に「こちらが素晴らしいドレスだと褒めてもらったのに、相手はものすごくカジュアルな普段着といった場合、何と褒め返せばよいのですか?」と質問しました。すると不思議そうに、「ただThank you と言えばいいのよ」という返事。「褒められたら褒め返すのではないのですか?」とわたし。「相手のことを褒めたい時にだけそうしなさい。そうじゃないとそれは却って失礼です。」

 なるほど。わたしは何かもらったらお返しをする、という日本人的な発想をしていたことに気付きました。確かに思ってもいないのに言っている言葉は相手に分かりますし、言われてもうれしくはありません。納得でした。

 ではどうすればこのようなうれしい言葉、気持ちをスマートに受け取れるのでしょうか。受け取り方を教わる気持ちで色々観察してみたところ、やはり「Thank you」「ありがとう」とサラッと受け取るのが一番かっこいいようです。その後に長々と言い訳や、どこで買ったか、値段がどうのこうの、など説明が入るとかっこ悪く感じます。

 反対に、大感激して、こんなこと言われたのは生まれて初めてです、という態度もこれまたあまりスマートではありません。言われた方の立場からすると、うれしいし、照れくさいし何かコメントをしたくなるのですが、そこはグッとがまん。「ありがとう」もしくは「ありがとうございます」と言って軽くニッコリします。せっかく言葉にして褒めてくれたということへの感謝を伝えます。

 日本人は褒めることも褒められることも、どちらもあまり慣れていないと

いわれています。ただ贈物に関しては、その物の選び方、渡し方、包み方、言葉の添え方、お礼状の出し方、すべて美しく、まさに芸術の域といえる文化を持っています。褒める言葉もそれと同じ。相手をうれしい気持ちにする言葉をもっと気軽に贈りあう、そして、相手の好意をありがたく受け取ってみてはいかがでしょうか。

著者プロフィール

大里千春(Chiharu Ohsato)

イメージストラテジスト。エグゼクティブコーチ。

4歳からピアノを始める。そのまま音楽の道に進み、講師としてのべ2000人以上の生徒への教育の実績を積む。コーチングに出合い、音楽のキャリアに終止符を打ち独立。自らの体験から人生が大きく変わるきっかけとなった、コーチングとイメージストラテジングをその職業に選ぶ。ニューヨークにてイメージ関係のスキルを幅広く学び、ICF国際コーチ連盟ACC認定コーチ、AICI国際イメージコンサルタント協会認定イメージコンサルタントの資格を取得。

主にエグゼクティブを対象にパーソナルコーチング、組織内の関係性をデザインするリレーションシップコーチング、またイメージ戦略コンサルティング、セミナーを行うことにより、ビジネスでの成功を導いている。人が自分自身の深い部分とつながり、誇りを取り戻し大きな力で限界を超えていく姿に、コーチ、イメージストラテジストとしてサポートができることに限りない喜びを感じている。著書「優れたリーダーが実践するイメージチェンジ成功法」日本経済新聞出版社。


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