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業務のPDCAサイクルを確立し、ビッグデータ活用につなげる手法とは?

市場の成熟に伴い、企業における業務の絶えまない見直しが生き残る上で欠かせなくなっている。その実践にあたり重要性を指摘されているのが、SOAを基盤とするBPMの実施である。ただし、その実践手法は十分に周知されているとはいい難い。最適なアプローチとはいかなるものか。

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組織を絶えず見直し、企業の“健康”を保つ!

 経営環境が目まぐるしく変化する中、自社ビジネスを絶えず見直すことを抜きに、競合他社とのし烈な競争を勝ち抜くことはもはや困難だ。自社の業務は果たして顧客の要望を十分に満たすことができているのか。この問い掛けに正面から向き合い、理想と現状のギャップを埋め続けることは、次なる成長軌道を描くためにも欠くことはできないだろう。

 そのための手法として、改めて注目を集めているのがBPM(Business Process Management:ビジネスプロセス管理)だ。BPMは決して目新しい存在ではなく、これまでも課題を抱えている組織に対してしばしば適用されてきた。だが、その本質は、組織のBPR(Business Process Re-engineering:ビジネスプロセスリエンジニアリング)を通じた業務改善にある。つまり、BPMは企業がビジネスをよりよくするための解の1つといえるわけだ。

 日立製作所ソフトウェア本部 システム基盤ソリューション部で担当部長を務める吉村誠氏は、10月26日に開催された経営層向けセミナー「第25回 ITmedia エグゼクティブセミナー」のセッション冒頭で、BPMの意義と位置付けを次のように解説した。

 「健康で長生きする。このことについて、人と企業に共通することは意外なほど多い。体を鍛え、血液の循環を良くすることの大切さはよく耳にするが、これを企業に当てはめれば、組織をより市場環境に即応できる筋肉質なものに見直し、情報を必要とする部署に迅速に届けられるようにすることと言い換えられる。これらを実現するための手法こそがBPMである」(吉村氏)

BPMのために不可欠な3つのプロセス

 BPMは、厳密には、業務プロセスを「受注」や「在庫引き当て」などの単位にまで分解し、個々の分析/整理を通じて問題点を洗い出すことで、最適な流れになるよう継続的に改善する業務管理の手法と定義される。

日立製作所ソフトウェア本部 システム基盤ソリューション部 担当部長の吉村誠氏
日立製作所ソフトウェア本部 システム基盤ソリューション部 担当部長の吉村誠氏

 そもそも「業務」とは、人や機械が実施する1つ以上の「作業」で構成され、作業は業務に付随する「情報」によって遂行される。また、作業と業務の双方には、それぞれの「プロセス」が存在し、情報にも個々の作業で発生・更新されるものと、作業を遂行するために参照される共通情報(マスター)が存在する。業務を次に引き継ぐプロセスでは、共通情報を同期させるための作業が発生する。

 「これらから明らかなことは、BPMを実践する上では“作業”と“業務”、さらに“情報”のプロセス連携が欠かせないことだ。当社が提供するSOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)基盤は、この3つすべてをカバーしていることが最大の特徴だ」(吉村氏)

 SOAとは、ビジネスプロセスの構成単位に合わせて構築されたソフトウェア部品や機能を相互に連携させるシステム設計手法。日立製作所が考えるSOAでは、BAM(Business Activity Monitoring)に対する取り組みにも特徴がある。一般にBAMは、業務におけるKPIをリアルタイムにモニタリングし、問題把握と対応を迅速化するために実施される。ここで注目されるのが、多くの場合、監視や分析をSOA基盤が蓄積するプロセスログを基に行うのに対し、日立製作所のアプローチでは、連携先のアプリケーションやトランザクションデータベースのログも含めて解析する点である。

 「リードタイムやターンアラウンドタイムの把握だけでは、各プロセスでの作業レベルまで把握が困難だが、当社の手法であれば、どこから、どのデータが、どことやり取りされているのかまでが“見える化”できる。加えて、各サービスで実行されるプロセスおよびその関係性を把握でき、サービスのリソース不足などとなった原因が容易に突き止められる。その結果、IT投資効果をより詳細に把握できるとともに、きめ細かな業務改善にもつなげられるわけだ」(吉村氏)

鮮度の高いビッグデータを全社に循環させるために

 BPMのためにSOA基盤を導入するにあたっては、乗り越えるべき大きな課題があると吉村氏。SOAではプロセス基盤と多数のサービスが連携して処理を実施する。だが、連携にあたりサービスの挙動を制御する制御情報に加え、サービスで処理すべき業務データのやり取りも避けられず、そのデータ量の膨大さから処理スピードの低下を避け難いのが実情なのだという。

 「この問題を解決する手法の1つに、制御情報のやり取りとは別に、各サービスがデータベース(DB)と業務データを直接交換できる仕組みを整備することにある」(吉村氏)

 また、システムの拡張に併せてDBを追加・拡張することで、複数DBで同一データを管理する企業も少なくない。その結果、DB間で同期をとらねばならず、新規開発コストを上昇させる原因の1つとなっている。この複雑化したDBにおいて情報を分析するために、社内ではいくつものデータマートを作成しなければならず、それらはいずれもある時点での情報の集計であり、そのことが経営判断に使用する情報としてはタイムラグがあることになる。

 「データソースを一元化することで、非マートでの情報分析を実現すれば、これらの問題が抜本的に解決される。そして、ビッグデータの基盤を用いればそれが可能となる。実際に日立では、必要な情報を単一のデータソースからリアルタイムに収集するための仕組みを実現することも可能だ。これにより、企業活動の血液ともいえる“情報”を、新鮮な状態で全社に循環させることができるのだ」(吉村氏)

システムにかかわる立場ごとの効果を基にシステムを最適化

 このように、SOA基盤によりBPMを実施することで見込めるメリットは多い。日立では、費用対効果や業務における受益者など、SOAの採用にあたって直面しやすい疑問から具体的な実装手法を明確化するために、SOA適用のパターンおよびパターン別の効果を整理している。

 具体的には、各パターンの採用によって見込まれる効果を、「業務主幹元」と「開発者」、「運用担当者」という異なる担当者の立場に応じ た視点で確認できるチャートが提供される。例えば、ESB(Enterprise Service Bus)を、サービスを連携させるハブとして利用する「ハブ型自動業務フロー」の場合、個別システム間で連携していく場合と比べてサービス間の連携パターンが大幅に簡素化されるため、サービス追加するなど新たな「開発」に必要とされる労力は大幅に削減される。ただし、使用している業務システムの数自体は変わらないため「運用」に要する労力の軽減は期待しにくい。一方で、ESBのログから各プロセスが一元的に可視化されることで、業務分析の実施は容易になる。

 「チャートによって、SOAで見込まれる立場別の効果を、パターン別にひと目で確認することが可能。これらを基にシステムを見直し、PDCAサイクルを回すことで、経営も確実に改善でき、会社の健康が維持されるのだ」(吉村氏)


各業務担当者の立場ごとに異なるプロセスを可視化

クラウドで開発コストと時間を削減

 吉村氏は、こうした仕組みを用いた事例を紹介した。M&Aなどの企業合併によってグループを統合したある企業では、決算業務の処理速度の向上に加え、システムの新規開発コストの削減につながる対策が強く求められていたという。これを受け、この企業では日立製作所のチャートを参考に、開発者と運用担当者に大きな効果が見込める2つのパターンでSOA環境を整備。その効果は、システム間連携のパターンが簡素化されたことで処理期間が大幅短縮。連携のための開発の手間も削減し、SOA基盤での集中監視を実現したことで、開発コストと運用コストも半減したという。

 もっとも、システムに手を加えるには、コストの問題を避けては通れない。そこで、日立製作所が活用を積極的に推し進めているのがクラウドだ。

 「SOA基盤を整えているからこそ、クラウド上でのサービス開発に容易に乗り出すことができる。一からアプリケーションを開発していては、時間とコストの双方の面でロスが生じることは明らか」(吉村氏)

 すでに同社は、顧客の社内システムをセキュアなクラウド基盤上に拡張するソリューションを提供。その上でシステムを構築するためのミドルウェア機能を、クラウドサービスとして提供することも近いうちに計画している。具体的には、クラウド上で開発環境を提供するサービスや、業務の作業手順をナビゲートするツールなどがそれだ。

 これらの基盤製品に位置付けられるのが、同社のクラウドサービスプラットフォーム「Cosminexus」である。Cosminexusは、上述したSOAの“作業”、“業務”、“情報”という3つのプロセス連携に必要とされる機能をすべて包含。のみならず、企業システムに必須のセキュリティはもちろん、あらゆる環境下でSOAを実現するための機能も兼ね備えている。モニタリングサービスによって、さまざまな角度からシステム、さらに業務の分析も実施でき、業務の高度化につなげることが可能となる。

 「CosminexusによってSOA基盤の透明性をさらに高められる。そこで得られた気付きを基に、変化への対応策を講じることができるのだ」(吉村氏)

 BPMのためのSOA基盤の整備を通じて、環境変化への高い対応力を養うとともに、ビッグデータの活用に向けた基盤も整える。クラウドの利用によってコストを抑えつつ、拡張できる仕組みも整備する。これらを具現化し、システム最適化の足掛かりとするためにも、日立製作所のBPM/SOAソリューションは大いに注目すべきであろう。

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提供:株式会社日立製作所
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エグゼクティブ編集部/掲載内容有効期限:2012年12月18日

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