M2Mで日本が世界に先駆けるために必要な「視点」と「戦略」:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
2013年2月27日に開催された「第23回ITmediaエグゼクティブフォーラム」において、基調講演を行った独立行政法人情報通信研究機構執行役の富田二三彦氏は、「M2M/IoT:スマートコミュニケーション社会で世界に先駆けるビジネス戦略」と題し、M2Mに関連して世界各国で進められている「標準化」の取り組みの現状や、それに対して日本のメーカーやサービス事業者はどのようなスタンスでかかわっていくべきかについての提言を行った。
日本は異業種が横串で連携する「フードコート型」を目指せ
モビリティ分野での技術革新については、日本の「少子高齢化先進国」としてのメリットを生かすこともできるのではないかと、富田氏は指摘する。
「今後、あらゆる国や地域で高齢化が進んでいく。日本には、少子高齢化先進国として高齢者でも運転しやすく、使いやすい、モビリティシステム、ひいては社会システムを先行して作り出せる土壌がある」(富田氏)
同様に、他の分野においても、世界市場への展開を構想しながら、日本市場へと製品を投入していくことで、世界の消費者にリーチするビジネスが可能になっていくだろうとした。
富田氏はここで改めて、欧州と米国における「国際標準化」と「ビジネス」との関係について触れた。欧州を基盤先行の伝統ある「高級レストラン型」、米国をオープンな自由競争でサービスやビジネスが先行する「ホームパーティ型」と評した上で、日本がアジア圏発で取るべき戦略として、日本と世界各地の消費者が持っているさまざまな生活要求に高い技術力で応える「フードコート型」がふさわしいのではないかと述べた。
「アジアのマーケットは拡大しており、多種多様なニーズに応えるビジネスを展開できる。日本が世界を制していくためには、すでにICTの利活用を進めている異業種が横串で連携し、業際イノベーションを起こしていくべきだ。これまでは、ある特定の業界の中で縦に連携してビジネスを展開するケースが多かったと思うが、今後のM2MやIoT(Internet of Things)の世界では、幅広い業界同士で横に連携を行い、あるいは仲介し、さまざまな業界の要求とメリットをとりまとめていく動きが重要になる」(富田氏)
その上で、欧州や米国での標準化、異業種連携の動きをにらみつつ「各国の様子見、受け身ではなく、欧州と協調しつつ、米国に先駆けて業際ビジネスを見いだし、oneM2Mのような標準化パートナープログラムの中で、必要な協力関係を樹立していくべきだ」とした。
日本、アジアの発言力が強い「oneM2M」
富田氏が挙げた「oneM2M」は、ビジネス探索を主眼に、M2Mの分野において国際標準化を進めているパートナープログラムだ。日本、米国、欧州、中国、韓国から7つの標準開発機関(SDO)によって2012年7月に設立されたばかりの組織であり、日本からは一般社団法人電波産業会(ARIB)と一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)が設立にかかわっている。今後、さまざまなワーキンググループを通じて、M2Mデバイスが世界規模で通信を行うための技術仕様や技術レポートの開発を行っていくという。
「アジアからの参加メンバーも多く、Technical Plenary Leadershipの副理事として日本のKDDIのメンバーが参加するなど、oneM2Mには、まだまだ日本やアジアによる発言力が十分にある。ぜひ、多くの日本企業がoneM2Mに参加し、ビジネス開拓や協力関係樹立の場として活用してほしい」(富田氏)
富田氏はまとめとして「携帯電話の爆発的な普及や急速な進化を振り返っても分かるように、20年先のICT市場の状況というのは容易に想像できるものではない。例えば、2030年にモビリティの世界はどうなっているかに思いを馳せてほしい。幅広く将来のICTユーザーのメリットを見いだし、oneM2Mのような場での情報交流の中から、メリットを実現するための協業ビジネスを創造していってほしい」と述べ、講演を締めくくった。
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