マジンガーZの格納庫は72億円――独創的なアイデアで広報活動を活性化:ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)
「マジンガーZの格納庫を作ったらいくらになるか?」不可能とも思えることを実現している人たちが、前田建設工業ファンタジー営業部にいる。この壮大なプロジェクトは他社をも巻き込み、10年も続いている。
アニメファンの期待を裏切らないこと
「広告代理店に相談したところ数千万円が必要という。あきらめて帰ろうとしたところ、担当者から“原作者が許可をしたら広告代理店は何も言えない”という話を聞き、原作者にコンタクトしようとしたが、今度は人脈がない。たまたまアニメの版権を持つ会社が前田建設のオフィスの近くにあり、版権担当者に会うことができた」(岩坂氏)
版権担当者から原作者を紹介してもらい、許可も得た。いざ、構造物を作ろうとすると、メンバーから「重工や設備などはどうするのか?」という前田建設だけでは実現できない問題が指摘された。岩坂氏は、「日本の名だたる機械メーカーのホームページのお問い合わせ窓口から協力を依頼した」と言う。
「営業経由で依頼することもできたが、それでは“おつきあい”での協力というものになり、おもしろいコンテンツは期待できない。いくら何でも、お問い合わせ窓口からの協力依頼は無茶だと思ったのだが、タダ働きで、PVが1ケタかもしれないホームページに社名が載るだけの企画に、多くの企業が協力してくれた」(岩坂氏)
紆余曲折を経て、2003年2月にホームページを公開。コンテンツに関して、版権担当者から“ファンの期待を裏切らないために、アニメのすべてのシーンを見て矛盾がないようにしてほしい”という要望がありすべての作品を細かくチェックした。進める過程でいくつかの壁に突き当たり、建築技術者から大まじめに“実現できるわけない”という怒りの声が上がったこともある。混乱がありながらも課題を乗り越えて、おもしろいコンテンツができあがった。
“タダ働き”マネジメントへの挑戦
ファンタジー営業部のホームページを公開して1年経ったあたりから、PVも伸びはじめ、メディアにも取り上げられるようになり、マジンガーZの格納庫、銀河鉄道999の地球発進用高架橋は文庫本が、機動戦士ガンダムのジャブロー基地は単行本が発刊された。また、ホームページを見た企業から、企画が持ち込まれるようにもなった。
ロボット救助隊やドミノ・ピザの月面出店計画、50年後の百貨店の創造、東京オートサロン2012に出展する日野自動車のブース壁画作成などである。また人気劇団のヨーロッパ企画が「前田建設ファンタジー営業部」を舞台化し、京都と東京で講演するなど、さまざまな業種・業態とのコラボレーションが続いている。
岩坂氏は、「ファンタジー営業部は、“タダ働き”マネジメントへの挑戦である。そのためには、“動機の生成(独創的なアイデア、目的とアウトプット、熱意と自信)”と“動機の維持(無駄の排除と本気のリアクション、結果の創出)”が必要。前田建設と仕事をして良かったと言われたい」と話している。
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