検索
ニュース

CIOに求められるのはIT活用のセンス──産官学の協力で日本の競争力を向上する国際CIO学会研究大会講演会「日本産業の未来」(2/2 ページ)

IT産業競争力の現状と課題を企業のCIOはどのように認識し、どのように対応しようとしているのか。このとき産官学でどのような取り組みを推進していけばよいのだろうか。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

1500兆円のアクティブシニア市場で産業競争力を強化

 人口減少・超高齢社会における産業競争力強化のための戦略について富田氏は、次のように語る。「アクティブシニアの個人資産は1500兆円といわれており、そのうち55%が流動性の高い現金や預金である。これまで消費における最優先事項は、"高機能"とか"低価格"だった。しかしアクティブシニアの最優先事項は、"信頼"や"安全"である」

 この"信頼"や"安全"を買う分野のひとつがヘルスケア分野である。高齢化社会が進む中で医療費は増え続けている。2011年度の医療費は、全体で38兆円、そのうち公的負担が14兆円だった。これが10年後には60兆円、公的負担が25兆円になると予測されている。そこで予防に関するサービスを充実させ、医療費を抑える取り組みが注目されている。

 富田氏は、「例えば健康保険組合には、レセプト情報が集まっており、これをクラウドサービスで活用して医療サービスを提供することで、健康保険組合員の保険料を下げられることが実験により実証されている。そのためにはITの活用が不可欠である」と話す。

 また藤重氏は、「高齢化社会に対する提案を一言でいえば、就労期間を長くすることである。これにより医療費問題、年金問題を含めた、社会負担の軽減につながる。また"身体の健康"と"心の健康"の両立も重要。そのためには、治療ケアから予防ケアへの政策転換が必要。電子カルテなどを活用した在宅医療システムの実現も求められる」と話す。

 さらに飯島氏は、「重要なのは、既存の業務をITで置き換えるのではなく、ITの強みを生かしたビジネスモデルを開発すること。例えば、マイナンバーを活用することで、出生時から幼稚園・保育所、小中高校、大学、そして社会人までの健康診断の結果を一元化し、診療や予防に生かすことが期待できる」と話している。

CIOの最重要コアコンピタンスは?

 今後、CIOが重視すべきコアコンピタンスについて富田氏は、次のように語る。「ビッグデータ、オープンデータなど新しいテクノロジを活用して、新たなビジネスを創出していくことが重要。企業価値を向上させる攻めの投資がCIOには求められる」

 また藤重氏は、「CIOには、企業の経営課題を社内で解決する部分と社外にアウトソーシングする部分に区別する目利きのセンスが重要になる。ソリューションの時代ではひとつの企業では実現できないこともあり、複数の企業とのコラボレーションが必要。このとき何が自社の強みなのかをしっかりと把握しておくことがCIOには求められる」と言う。

 さらに飯島氏は、「業務に必要な情報をいかに的確にやり取りできる仕組みを実現するかにかかっている。またエンタープライズレベルでITの活用を考えることが、今後のCIOのコアコンピタンスになる」と話している。

 パネルディスカッションのまとめとして岩崎氏は、「産官学が協力して、日本の産業の未来をいかに形成していくかが問われている。政府としては減税措置や規制緩和などの政策を実施しているが、企業はこうした制度を利用して抱えている課題を解決していくことが必要。またIT投資において、投資の中身や質にも着目し、攻めと守りのバランスが重要になる。現在は社会環境の大きな変化のときであり、就労人口の減少や高齢者の8割を占めるアクティブシニアの活用、健康・予防のための医療の充実などにITを活用することが必要。ITの強みを生かしたビジネス展開により、社会コストを削減し、日本の競争力を向上することができる。このときCIOには、変化の激しい市場でいかにイノベーションを起こし、企業の価値を高めるか、そのセンスが求められる」と話す。

前のページへ |       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る