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日本の弱点は変化に対するスピード――先を読む努力がいままで以上に必要になるNTT DATA Innovation Conference 2014リポート(2/2 ページ)

日本人には目標が設定されればそれに向かって目覚ましい仕事をするという資質がある。そのときに必要なのが多様性とスピード。みんなが同じことをしていたのでは、世界のスピードにはついて行けない。

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先を読む努力がいままで以上に必要になる

 「世はIT時代である。日々生み出される膨大なデータを活用できなければ進歩はない。しかし大切なことを見失うと、IT化に翻弄されることになる」と岡本氏は言う。映画「マトリックス」では、ラストシーンで主人公の人間が悪役の牙城である情報発電所に攻撃をする。ここでいう悪役とは機械である。

 「人間が創り出した機械により、人間が破滅させられるのがマトリックスの主題である。これは映画の世界であり、非現実的だと思っている人も多い。しかし“無人戦争”は各国の国防省の重要な研究課題である。人間が危険を冒さずロボットと無人攻撃機により戦争をする時代が現実になっている。しかもコンピューターが人間の脳のように状況に応じて、攻撃したり、しなかったりを判断する研究が進んでいる。これからテクノロジに振り回されないようにいかに対応していくかは大きな課題のひとつである」(岡本氏)。

 人間の脳はすさまじい能力を持っている。1立方ミリメートルあたりに10万個の脳細胞がある。脳の中に張り巡らされているネットワークをすべてあわせると100万キロメートルになり、このネットワーク上に1つの細胞から数千のパルスが飛び交っている。現在は、コンピューターを駆使して計算するよりも、脳の働きの方が優れている。

 岡本氏は、「機械はあくまでも補助的な手段として利用しなければならない。必要な情報を見つけるための手段をコンピューターは教えてくれない。それは自分自身で考えなければならない。これにより自分にとって意味のある回答をコンピューターから導き出すことができる。若い人たちは、われわれ以上にコンピューターを使いこなす能力を持っている。一方、私は現在68歳だが、考える集中度は若いときよりも増えている。これからはアナログ世代の強い情熱と信念をもつシニア層が非常に重要になってくる。シニア層が培ってきた知識や経験をコンピューターにインプットすることで、初めて大きな成果が得られると信じている」と話す。

 「われわれが、若い人たちに情熱を伝えていかなければ、これからの世界の激動に日本はついていけないのではないかと思っている。日本にとって大切なのは多様化である。1980年代には、日本は単一民族であることが強みだと思っていた。いまの世の中は、一昔前とはまったく異なっている」(岡本氏)。

 人口爆発で70億人が地球上にいるが、1人ひとりが才能のあるタレントである。さらにMITなどのアメリカの大学の授業がネットに全て公開されており、無料で世界トップレベルの教育を受けることができる。価値観や考え方、バックグラウンド、教育、経験など、違った人が集まれば集まるほどブレークスルーが起きやすくなる。

 パフォーマンス集団である「シルク・ド・ソレイユ」は、21カ国からメンバーが集まっており、それぞれに得意技を持っている。「多くの才能を集め、1つにまとめることで、もう一段うえのレベルに進むことができる」と岡本氏。

 岡本氏は「日本人には、いったん目標が設定されれば、それに向かって目覚ましい仕事をするという資質がある。だから2020年に開催される東京オリンピックに向かって、新たな取組みが始まりすばらしいものになると確信している。そのときに必要なのが多様性とスピードである。日本の弱点は、変化に対するスピードである。世界はすさまじい勢いで変化している。そこで少しでも先を読む努力が、いままで以上に必要になる」と話し、講演を終えた。

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