日本再興戦略の成功と超高齢社会の問題解決――鍵になる女性の活躍とICTの活用:国際CIO学会10周年記念講演会(2/2 ページ)
国際CIO学会創立10周年記念公開講演会「日本経済社会の未来」のセッションでは、「超高齢社会における女性とICT」をテーマにパネルディスカッションが行われた。
アベノミクスに対する評価
岩田氏は、安倍政権が進める女性活躍推進、女性活躍推進における企業の課題、女性の活躍とICTの活用の3つについて語る。岩田氏は、「安倍政権が進める女性活躍推進を2つの点で高く評価している。1つは差別や機会均等など人権の観点だけでなく、女性の活躍により企業が活性化し、トータルで日本経済が再興するという切り口を示したこと。もう1つは子育てと仕事の両立だけでなく、女性のキャリアアップが実現してはじめて女性の活躍が期待できるという切り口を示したことだ」と話す。
女性活躍推進における企業の課題は、何時間でも働ける、どこにでも転勤できるという、専業主婦を持つ男性モデルの働き方の常識を変えることだ。この働き方では、女性は活躍できないし、共働きが増えた現在では、男性も活躍しにくい。また女性のキャリアアップにICTツールを活用することも重要になる。岩田氏は、「端末を会社の外に持ち出すことができれば、直行直帰ができるし、自宅で仕事もできる。時間あたりの生産性を向上するためにもICTツールの活用不可欠である」と語る。
最後に斎木氏が、日本政府の国際的な取り組みを紹介。斎木氏は、「アベノミクスの第3の矢である日本再興戦略において女性の活躍は主要な取り組み。国内だけでなく、国際的にも重要である。たとえば第5回アフリカ開発会議では、日本とアフリカのビジネスウーマン交流プログラムがスタートした。これはアフリカの未来を担う女性を支援するもので、アフリカの女性企業家を支援するセミナーの開催などに取り組んでいる。米国も米国・アフリカ女性企業家プログラムを立ち上げたが、日本も協力している」と話す。
またAPEC(アジア太平洋経済協力)での取り組みとして、2010年に横浜で開催されたサミットで、質の高い経済成長を目指した改善策が議論された。この成長戦略の1つとして、ICTを活用したスマート化が提唱されている。また今年3月に仙台で開催された第3回国連防災世界会議で実施されたワークショップでは、東日本大震災の復興過程における視点、復興支援における取り組み、今後の災害リスクの軽減などで女性の役割が重要になることが紹介された。斎木氏は、「日本政府では、今後もアフリカやアジアの経済成長の支援を推進していく」と言う。
ディスカッションのまとめとして岩崎氏は、次のように語る。「今回、さまざまな改善策が議論された。例えばICT分野では、ウェアラブルやIoTなど、先端技術を活用して介護を支援したり、健康を促進したり、ビッグデータで新たな市場ビジネスにつなげていくことが期待される。またICT業界の女性をいかに増やしていくかが重要な課題だが、理系の若い世代の育成が必要。さらに働き方を変えることも重要な取り組みであり、組織のトップが本気になって業務改革を推進することが必要になる」
岩崎氏は、「業務改革というとコスト削減を考えがちだが、効率性と生産性を向上できなければ意味はない。最後に個人的にも関心の高い経済効果への寄与に関し、女性の活躍が要になるという非常に心強い言葉をいただいた。今後は、どれだけ経済効果に寄与できるかを実証していくことが必要だが、私自身も女性が働くことによる経済効果のデータを集めており、このデータをもとに実証していきたい」と話しディスカッションを締めくくった。
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