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トップマネジメントは委員会ではないドラッカーに学ぶ、成功する経営チームの作り方(2/2 ページ)

「委員会」とは、多数決で物事を決める制度のことで、「チーム」とは、協力して行動する一枚岩の集団のことだ。チームとしてのトップマネジメンのあるべき姿とは。

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 1990年代以降、企業の不祥事が発覚したことを背景に、コーポレート・ガバナンスが注目されるようになった。コーポレート・ガバナンスとは、組織を統制し、仕事の過程を監視する制度のことだ。それは、監査役や社外取締役という第三者が、事業運営のやり方や情報開示のあり方を確認し、組織の最上層部がその職務を適切に果たしているか監督する機能だ。

 その制度が有効に働いているかどうかはさておき、企業のあり方にどんな影響を与えているのだろうか。会社の方向性を左右する重要な意思決定においても、その審議を問う時に多数決で決議されるような風潮がますます色濃くなっている。まさに、企業のトップマネジメントは委員会になっている。

リーダーの役割

 「リーダーの役割の重さは多様である」とはどういうことだろうか。映画監督を例に考えてみよう。映画監督は映画の完成に責任を持ち、制作現場では作品創作にあたり全権を持ってる人だ。一方映画監督は、目に見える具体的なタスクは持たない。映画監督の役割は、役者、撮影担当、衣装担当、音響担当、大道具担当、など、それぞれの専門的な役割を持つ人々を束ねて、いい映画を生み出すことにある。

 経営チームのリーダーが具体的な仕事を持つことはあるが、その役割は映画監督によく似ている。経営チームのリーダーは、組織の方向性を明らかにし、何をやるかをはっきりさせ、世の中に価値を生み出していくことに尽きる。

 アップルは、ご存じのとおり、スティーブ・ジョブズ、ロン・ウェイン、ステファン・ゲーリー・ウォズニアックによって設立された。技術者のウォズニアックがジョブズに言った言葉は有名だ。

  • ウォズニアック:

「キミはコードも書けなければ、デザインもできない。エンジニアでもなければ、金槌で釘を打つわけでもない。じゃあ、どうやって10倍も生産性をあげるつもりだい? キミの役割ってなんなんだ?」

  • ジョブズ:

「僕にできることはただひとつ。オーケストラを束ねることさ」

ドラッカーは、リーダーの仕事についてこう言っている。

「今後のトップの仕事は、私が知りうるかぎりもっとも複雑な仕事、すなわちオペラの総監督の仕事に似たものとなる。スターがいる。命令はできない。共演の歌手が大勢いて、オーケストラがいる。裏方がいる。そして聴衆がいる。すべて異質の人たちである。しかし総監督には楽譜がある。みなが同じ楽譜をもっている。その楽譜を使い、最高の結果を出す。トップが取り組むべき仕事がこれである。」

 まさに、リーダーが担う役割の重さは多様だ。私は企業評論家ではない。経営者の助けとなることを仕事するコンサルタントだ。第三者としてのコメントで終われない。企業は、生き物ののように、自分の生存を目的として生きていくことはできない。企業は社会の役に立つことではじめて生きていける。さらに、社会の役に立つために、トップマネジメントを委員会として運営するのではなく、チームとして機能させていただきたい。

著者プロフィール:山下淳一郎

トップマネジメント株式会社 代表取締役

ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。


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