満場一致は危険な意思決定:ドラッカーに学ぶ、成功する経営チームの作り方(2/2 ページ)
何かを決める時、後で予想外の問題に遭遇しないためにも、「意見の不一致」が必要。その場にいるすべての人が、異議なく異論なく考えが一致することはあり得ない。
会社の考えが定まらないのは問題
もちろん、トップが他の役員の反対意見を封じ込めてしまえばそれまでだ。しかし、反対意見が出てこないのは、「社長がそう言っているのだからよしとしよう」という考えか、「自分には直接関係ない」といった、他人事としてしか考えていない証拠と言える。
重要な何かを決める時は、のちに予想外の問題に遭遇しないためにも、「意見の不一致」が必要だ。そもそも、その場にいるすべての人が、異議なく異論なく、考えが一致することはあり得ない。人間の数だけ意見が違う。役員が十人いれば、そこには十通りの考えがある。
どんな組織も、「私の立場に立っていえば私は正しい」、「あなたの立場に立っていえばあなたは正しい」。誰も間違ったことはいってはいない。多かれ少なかれ、それが組織の現実である。しかし、そのままでは、お互いの考えは交差することなく、会社の考えは定まらない。意見が食い違うのはいいが、いつまでも会社の考えが定まらないのは問題だ。
正々堂々と話し合えばいいが、なかには話し合いを避け、見えない所で人の足を引っ張る人もいる。内紛が起こり、派閥が生まれる。そうなってからでは遅い。そうならないために必要なのは、真摯な話し合いだ。
人間は理論と感情の両方で自ら動く。人と人を結ぶのは、誠実な話し合いしかない。経営チームは、組織上の上下関係はありながらも、お互い自分の考えを言い合える間柄である。それが、チームワークになくてはらないものだ。
例えるなら「内閣」のようなもの
取締役が何人かいると、つい「うちの会社には経営チームがある」と錯覚してしまう。重要なことは、「経営チームがあるかないか」ではなく、「経営チームがチームとして機能しているかどうか」である。チームワークがなければ、不可能な仕事は不可能なままで終わる。チームワークが不可能な仕事を可能にする。
経営チームがチームとして機能していない会社は、いつも同じ問題に追われて停滞している。それに対して、経営チームがチームとして機能している会社は、常に新しい課題を追いかけ発展している。
一方、経営チームの具体的なイメージが湧かないという経営者も少なくない。経営チームの姿を具体的に例えるなら、「内閣」のようなものだ。内閣は、総理大臣というリーダーがいて、各分野の責任者である大臣がその分野の運営の一切を担っている。ここでいう総理が社長にあたり、大臣が他の役員にあたる。
経営チームの一人ひとりがそれぞれの分野の責任者として、意見の不一致を活用しながら、意思の疎通をはかり、さらに事業を発展させていただきたい。
著者プロフィール:山下淳一郎
トップマネジメント株式会社 代表取締役
ドラッカー専門のコンサルタント。コンサルティングファーム出身、上場企業役員を経て、トップマネジメント株式会社を設立。上場企業を始めとして、IT企業の経営チームにドラッカーの理論を活用するコンサルティングを提供している。一般社団法人日本経営協会専任講師、淑徳大学の経営学講師、デジタルハリウッド大学院大学客員教授、ダイヤモンドビジネスタレント派遣講師を務める。著書『ドラッカーに学ぶお客様を幸せにする会社の作り方』(角川フォレスタ)、寄稿に『人材育成の教科書』(ダイヤモンド社)、『企業と人材』、『経済界』、『人事マネジメント』等。
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