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「アリさんとキリギリス」――イノベーション人材をどう生かすか?ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

「怠け者」のレッテルを貼られてきたキリギリスの活躍の場が増えている。それまで美徳とされてきたアリの習慣や価値観がマイナスに働く場面も増えてきた。その背景となる環境変化とは。

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どのように反応が180度違うのか?

 では上の「3つの特徴」が日々の生活やビジネスの現場でどのように違うのか、いくつかの例を見て見ましょう。

  • 「前例がない」と聞いて「だからやらない」アリと「だからやる」キリギリス
  • ブランドや権威に弱いアリと気にしないキリギリス
  • 知識をため込んだ人が偉いと思うアリと知識も「使ったらすぐ捨てる」というキリギリス
  • 「常識」と聞いて、身につけるべき当然のものとして絶対視するアリと全く気にしないキリギリス
  • 「ばらつきは悪である」と考えるアリと「バラつかないならロボットがやった方が良い」と考えるキリギリス
  • ベストを尽くしてもうまくいかないのは組織や環境のせいだと思うアリと自分で環境まで変えてしまおうとするキリギリス
  • 本流にいることを良しとするアリと傍流に生きがいを見出すキリギリス
  • 規則に人を合わせさせようとするアリと、人に合わせて規則を変えようとするキリギリス
  • 専門家が多数集まれば良い結果が出ると考えるアリと、人が集まれば集まるほど結果が凡庸になると考えるキリギリス……

 このように、2者の反応は面白いまでに違うのです。

アリとキリギリスはどのように共存できるのか?

 最後にこのように全く異なる価値観を持った人材を活用するにはどうすれば良いか考えてみましょう。会社組織でよく起きる構図というのは、オペレーションに最適化された「アリの巣」にキリギリスを連れてきて跳ばそうとするものの全く「アウェイ」の暗いトンネルで何もできずに倒れていくという構図です。

 世の中の圧倒的多数を占め、世の中を動かしているアリですが、時に変化が必要であることを自覚してキリギリスを活用しようとするのですが、ここまで述べてきたような価値観の相違を理解しないままにアリの価値観を押し付けてしまうことが多いのです。

 特にアリは「巣の常識が全てである」という前提でものを見がちです。そもそもさまざまな価値観が存在し、ましてイノベーションには自分たちとは全く違う考え方を持った人たちが必要であることを「1つ上の視点から」認識して新たな活動に取り組みことが必須です。キリギリスとて同じことで、「ヒトモノカネ」を大量に「貯め込んで」いるアリの思考回路を理解しておくことは必須です。

 例えばよくある話として、新規事業の企画の審議に際して「過去のデータ」と「他社事例」を使って「ロジカルに」説明することを求めるのは典型的なアリの反応です。キリギリスは新しいことは最終的には「やってみなければ分からない」ことをよく知っているので、とにかくやってから反省はそのあとで、さらに短いサイクルで何度も試すというアプローチを取ります。

 どちらが正しいかではなく、今はどういう場面なのか? その前提条件がはっきりすればどちらの思想が馴染むかは自動的に答えが出てくるはずです。

著者プロフィール:細谷功

ビジネスコンサルタント。株式会社クニエ コンサルティングフェロー。東京大学工学部卒業。東芝を経てアーンスト&ヤング・コンサルティングに入社。製品開発、マーケティング、営業、生産などの領域の戦略策定、業務改革プランの策定・実行・定着化、プロジェクト管理を手がける。著書に『地頭力を鍛える』『問題解決のジレンマ』(以上、東洋経済新報社)『具体と抽象』(dZERO)などがある。


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