そして最後に、この本で一番みなさんにお伝えしたいのは、自分の仕事を壊すということです。自分の仕事を自分でしなくて済むようにすることこそ、究極的な「効率化」であり、今後生き残るために必要なことです。
IT(情報技術)やAI(人工知能)に仕事が奪われると恐れる人がいます。蒸気機関による機械化(第一次産業革命)、電力革命と大量生産(第二次)、コンピュータとインターネットによる情報革命(第三次)に続く第四次産業革命で、人間がすべき仕事の内容はどんどん変わっていきます。僕自身も、5年後にどんな仕事をしているか、まったく想像がつきません。でも、それを怖がっているわけではありません。むしろワクワクしています。
こんな時代には、「自分の仕事がなくなる」ことを恐れるのではなく、むしろ「どうやったら自分の仕事をITに置き換えられるか」「どうすればもっと自動化、省力化できるか」を考えてほしいのです。
自動車の「自動運転」が典型的ですが、人がやっていた仕事を機械で置き換えた人が勝つ状況になっています。空いた時間に自分の車を使ってタクシー業務ができるライドシェアの「Uber(ウーバー)」も、そのうち自動運転が主流になり、ドライバー自体が不要になるかもしれません。
動画ストリーミングサービスの「Netflix(ネットフリックス)」も、かつては宅配レンタルDVD業者にすぎませんでした。DVDという物理的なモノをなくし、人手を介した宅配サービスをネットに置き換えたことで、一気に自動化が進みました。
ほかにも、メディアを持たない世界最大のメディアカンパニー「Facebook」や、ベッドを1台も持たない世界最大のホテル事業者「Airbnb(エアビーエヌビー)」など、業界を破壊するような物事が次々と起こっています。
同じことは、みなさん一人一人の仕事でも実現できます。積極的に自分の仕事をITに置き換えていけば、そこであなたは仕事を奪われる側ではなく、次の形を創造する側に立てるかもしれません。そこまでいかなくても、空いた時間で別のことをして、より成果を上げることができるでしょう。
毎年同じことをしているだけだと、その仕事はきっと機械に取って代わられてしまうはずです。今みなさんに求められているのは、その時間で新しいことを始めることです。
時代の変化より速く動けたら、事前に何が起こるのかが分かるようになったり、時代を先読みして、自分が変化を起こしていけるようになったりするかもしれません。自分が変化に踊らされるのではなく、自分が変化をコントロールするようなイメージです。
そのためには、去年の1割増、2割増を目指すのではなく、いきなり10倍の飛躍を目指すGoogleの「10X」の考え方も、みなさんのヒントになるでしょう。10倍の成果を出そうと思ったら、従来の延長線上の発想ではとても間に合わないので、仕事の在り方そのものを根本から考え直さないといけないからです。
世の中には、効率化やスピード化に関するさまざまな「ライフハック」が出回っています。けれども、例えばキーボードのショートカットをたくさん覚えて1分1秒短縮したからといって、劇的な変化は起きません。
そもそもなぜ効率化するかといえば、仕事を1時間早く終わらせることがゴールではありません。時間を効率的に使うことで、より大きな仕事をし、より多くの人の役に立ち、その分利益も上げること。これが本来の目的です。そういう視点から考えれば、「1分1秒短縮する」ことの無意味さを感じてもらえるのではないでしょうか?
著者プロフィール:ピョートル・フェリークス・グジバチ
ポーランド生まれ。ドイツ、オランダ、アメリカで暮らした後、2000年に来日。2002年よりベルリッツにてグローバルビジネスソリューション部門アジアパシフィック責任者を経て、2006年よりモルガン・スタンレーにてラーニング&ディベロップメントヴァイスプレジデント、2011年よりGoogleにて、アジアパシフィックでのピープルディベロップメント、さらに2014年からは、グローバルでのラーニング・ストラテジーに携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発などの分野で活躍。現在は、独立して2社を経営
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