一流の研究機関で行われたモチベーションに関する実験結果:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
私たちを動かしている「モチベーション」とは一体なにか? スタンフォード大学やハーバード大学をはじめとする、各研究機関で解明された「人の心理と行動」のパターンを紹介する。
反対に、積極的にやろうとしていることは、アクション数を減らします。朝のジョギングを続けたいなら、寝る前にベッドの脇にジョギングウェアを広げておいてもいいかもしれませんし、読書習慣を続けたいなら、いつも着ている服のポケットに本をしまっておくといいかもしれません。
ただ、なんでもかんでもアクション数を減らせばいいというわけでもありません。時には、あえてアクション数を増やすことも大切です。1つ1つを丁寧に包んだり、直筆で手紙を書いたりすることによって、暮らしに豊かさやゆとりも生まれます。
なぜ私たちは、「やると決めたこと」を続けられないのか?(一貫性の原理)
最後に紹介するのは、このような実験です。ダイエット中の人たちを集めて、3チームに分けました。
そして監督者の指示により、
Aチームは、何も食べてはいけない
Bチームは、カロリー高めのお菓子を少量食べてもらう
Cチームは、カロリー高めのお菓子を満腹まで食べてもらう
しばらくたってから、食べ物が用意された別の会場に移動し、それぞれのチームの人たちが、どれだけ食べ物を口にするのかを観察します。
すると……
最も食べたのは、すでに満腹になっていたはずの「Cチーム」で、最も食べなかったのは、何も食べていない「Aチーム」でした。(参考:トロント大学 ピーター・ハーマンたちの実験)
なぜこんなことが起きたのでしょうか? それはきっと単純なことで、「ダイエットを頑張っていた」人が、「お菓子をたくさん食べさせられた」ことによって、「もういいや!」となげやりになってしまったからでしょう。結果的に我慢が効かなくなり、暴飲暴食をしてしまいました。
一方で、何も口にしなかった人は、「ダイエットを頑張っている」という気持ちを保つことができたので、空腹でも別会場で自制心が働いたのでしょう。
物事を継続したければ、油断することなく、常に自分を厳しく律すべきなのである! と言いたいわけでは、決してありません。「常に厳しく自分を律する」ことは現実的には難しい問題ですし、この実験のように、自分の意思に反してペースが乱されることは、日常では頻繁に起こりうるからです。
ここで伝えたいのは、「私たちは誰だって、意思の強さとは関係なく、自分で決めたペースが乱れると、なげやりになりやすい」ということです。
みなさんも経験はありませんか?
ダイエット、英語の勉強、ストレッチ、日記、トイレ掃除……頑張ろうと決意して、しばらく続けることができていたのに、1回たまたま「できなかった日」があった。しかし、そのたった1回のできなかった日のせいで、急にモチベーションが下がってしまったことが。
そんなとき、自分に失望して、意思が弱いんだ、だから続けられないんだと、やり続けていたことを放り出してしまうことがあります。しかし、その多くはきっと勘違いで、ただ単純に「やろう」と思っているペースが乱れたことで、投げ出したくなったという、人間の標準的なメカニズムが働いただけなのではないかと考えます。だから一度くらい「サボってしまって」も、全く気にすべきではありません。
ペースが乱れることは普通なことだし、ペースが乱れると、嫌な気持ちになるのも普通なことです。ただ「再開」すればいいのです。そして何度中断しても、再開するという選択を続けられると、結果的に「継続力」が身に付くのではないでしょうか。
いかがでしたか?
私はモチベーション研究の専門家ですが、人一倍怠け者です。いつ、何をやるにしても「後回しにしたい」気分と戦っています。だからこそ、「やらなきゃ」というストレスに敏感です。
なぜストレスなのかを考えて、それがやりたいという気持ちに変わるまで、毎日あの手この手を尽くしています。
やったほうがいいと分かっているけど、やりたくない――
……でも、今より前に進みたいから、やるしかないか――
そんな風に毎日脳内で戦っているのは、私たちだけではなく、全世界70億の人たちもみんな一緒だと思うのです。今日も「モチベーション」とうまく付き合いながら、記憶に残るような素晴らしい1日を送りましょう。
著者プロフィール:池田貴将(いけだたかまさ)
早稲田大学卒。リーダーシップ・行動心理学の研究者。
大学在学中よりベンチャービジネスの立ち上げなどに関わり、ビジネスの中での「心理学」の重要性を感じる。実践心理学の中で、世界的に有名なアンソニー・ロビンズのトレーニングを受けに渡米。主要トレーニングを全て修了。
大学卒業後、オープンプラットフォームを設立し、起業家・経営者・ビジネスリーダー向けのスクールを主宰。成果を上げる「感情と行動をつくる心理学」と東洋の「人間力を高める学問」を統合した独自のメソッドが注目を浴び、全国の経営者・役職者からたちまち高い評価を得た。著書は9冊『覚悟の磨き方 超訳 吉田松陰』『未来記憶』など、累計40万部を突破。
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