宇宙という新しい「市場」にチャレンジする時代が、ついに来た:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
宇宙開発というと国や政府が中心にやっていることだという認識があるが、民間による「商業の宇宙開発」は、この10年あまりで一気に加速している。
無重力空間を使って、地球では行えない創薬の実験をする。資源がたくさんありそうな小惑星を分析し、採掘を目指す。国際宇宙ステーションに「旅行」として滞在する……。そんなことも、もはや夢物語ではありません。
実際、ラスベガスのホテル王は、「宇宙でもホテル王になる」と、300億円規模の投資を行っています。月も、もはや目指すものではなく「経済活動をする場所だ」という認識で、月を舞台にした民間主導のコンペティション(技術開発レース)もグーグルのスポンサードによって行われていました。
月よりもはるかに遠い火星への飛行も、真剣に検討されています。イーロン・マスクは火星飛行が可能な大型宇宙船を発表し、人類が火星に居住することを目指した取り組みを進めています。
それこそイーロン・マスクが考えているのは、「火星移住計画」です。約40年から100年後には、火星を「100万人が暮らし、自給自足できる居住地にする」としているのです。なぜなら、複数の惑星に人類が住むようにしたい。地球に何かが起きたときに、別の惑星にも住めるようにしておきたい。そう考えているのです。
宇宙はもはや「優良投資先」という認識になりつつある
こうした「商業の宇宙開発」とも言うべき大きな流れが起きたのは、2005年のアメリカ政府による政策変更でした。スペースシャトル後の後継機の開発は民間に任せ、NASAは一顧客として民間から打ち上げサービスを購入するという大転換があったのです。2010年の新国家宇宙施策により官民連携で宇宙開発の商業化が推進されてきました。
実際、2005年に17兆円だった宇宙ビジネスの世界のマーケット「スペース・エコノミー」は、2016年には実に33兆円を超えるまでに拡大しています。このうち各国の宇宙予算、いわゆる公的なマーケットというのはもはや25%に満たなくなっています。すなわち、民間の商業によるサービスやプロダクトが大きく伸びてきたのです。しかも10数年でほぼ2倍という市場スケールです。
これに伴って、投資も急激に拡大しています。世界の宇宙関連ベンチャーへの投資は2015年に前年の約500億円から、約2300億円へと大きく膨れあがりました。2016年には約2700億円以上に達したと見られています。宇宙は今や、期待値の高い「優良投資先」という認識が広がっています。
日本においても、2015年は本格的な宇宙投資の始まりであったといえます。そして、今年、アメリカの調査会社の「スタートアップスペース2018」によると、宇宙スタートアップへの投資において、日本はアメリカに次いで世界2位に躍進しています。
私は宇宙ビジネスコンサルタントとして、この10年余り宇宙の商業化の変化を間近に見てきました。宇宙ビジネスの拡大は今もなお、世界規模に広がっています。
私たちは、大きく進化するこの状況をリアルタイムで見ることができます。そして関わることができます。今、宇宙という新しいフィールドに対して思い切ったチャレンジができるタイミングの真っただ中なのです。
宇宙が無限であるように、宇宙ビジネスの可能性も無限にあります。日本企業が、あるいは日本人が、宇宙ビジネスにおいて、これからさらなる存在感を放っていくことを祈ってやみません。
著者プロフィール:大貫美鈴(おおぬき みすず)
宇宙ビジネスコンサルタント
スペースアクセス株式会社 代表取締役
日本女子大学卒業後、清水建設株式会社の宇宙開発室で企画・調査・広報を担当。世界数十か国から参加者が集まる宇宙専門の大学院大学「国際宇宙大学」の事務局スタッフを務める。その後、宇宙航空開発研究機構(JAXA)での勤務を経て独立。現在は、宇宙ビジネスコンサルタントとして、アメリカやヨーロッパの宇宙企業のプロジェクトに参画するなど、国内外の商業宇宙開発の推進に取り組む。清水建設の宇宙ホテル構想提案以降、身近な宇宙を広めるためのプロジェクトへの参画はライフワークになっている。アメリカの宇宙企業100社以上が所属する「スペースフロンティアファンデーション」の、アジアリエゾン(大使)としても名を連ねる。新聞や雑誌、ネットでの取材多数。
経済産業省国立研究開発法人審議会 臨時委員
国際宇宙航行連盟 米国連邦航空局 商業宇宙飛行安全委員会 委員
国際宇宙航行連盟 起業・投資委員会 委員
国際宇宙安全推進協会 サブオービタル宇宙飛行安全委員会 委員
国際宇宙航行アカデミー 準メンバー
国連宇宙週間 理事
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