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組織におけるシナリオプランニングの実践方法――ベースシナリオとシナリオマトリクスVUCA時代の必須ツール「シナリオ思考法」(2/2 ページ)

環境要因を選び、その両極を考えるステップでは、思い込みにとらわれずどんどんいろいろなアイデアを出していく。

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 ベースシナリオを作成するためには、左上の象限に含まれている要因を共通のテーマでグルーピングします(例えば「技術の進化」や「人口動態の変化」など)。そして、それらが実現する未来の世界がどのようになるものかを整理します。

 整理の仕方は、箇条書きレベルで済ませるような場合もあれば、イメージしやすいようにストーリー化する場合もあります。どの程度の詳しさにするのかについては、プロジェクトの目的やシナリオの使い方によって変わってきます。

 このように作成方法自体はシンプルですが、実際の作業では、各要因を一つずつ検証し、それらが設定したテーマにおいて「ほぼ確実に起きる」といえるかどうかを慎重に調査してまとめていくことが大切です。

シナリオマトリクス

 ベースシナリオを完成させたら、次にシナリオマトリクスを作成します。

 シナリオプランニングにおいてシナリオの作成方法にはさまざまなものがありますが、今回はこの連載の第2回目でも紹介した2軸を組み合わせて4つのシナリオ(世界)を作る方法を紹介します。この2軸を組み合わせたものを「シナリオマトリクス」と呼びます。

 シナリオマトリクスは、前述した通り、不確実性マトリクスの右上の象限に分類した要因を使って作成します。まず、右上の象限に入っている要因を2つ選びます。そして、そのそれぞれについて、その要因が設定した時間軸で(例えば10年後に)どのようになるのか、両極端な結果を考えて軸を作ります(図3)。


図3:2つの外部環境要因を元にした軸の作成

 ここで重要な点は、不確実性マトリクスから2つの外部環境要因(図3で言えば環境要因aと環境要因b)を選んだとして、その両極の結果(図3で言えば環境要因aに対しては結果Aと結果B、環境要因bに対しては結果Cと結果D)の取り方にはさまざまなパターンがあるということです。

 具体的に見てみましょう。例えば図3の「環境要因a」として「AI(人工知能)」を選んだとすると、結果A、Bの組み合わせの例としては次のようなものが思い浮かびます。

  • A:活用されていない←AI(人工知能)→B:活用されている
  • A:生活面での活用が進む←AI(人工知能)→B:仕事面での活用が進む
  • A:事務的な作業を代替←AI(人工知能)→B:知的な作業も代替

 このように2つの環境要因を選び、その両極を考えるステップでは、思い込みにとらわれず、どんどんいろいろなアイデアを出していきます。

 こうして作成した2軸を組み合わせてシナリオマトリクスを完成させます。そのためのワークシートを図4に示しています。


図3:2つの外部環境要因を元にした軸の作成

 縦軸要因名と横軸要因名というのは図3の環境要因aと環境要因bを、軸の両極にある四角の中には、環境要因の両極で検討した結果A、B、C、Dをそれぞれ書き込みます。

 この組み合わせで良いのかどうかを考えるためには、図4に載っているようにシナリオタイトルを考えてみるのも一案です。それ以外には、それぞれのシナリオがどんな世界になるのかを箇条書きで書き出してみるというやり方もあります。

 そのようなプロセスを経て、もともと設定したテーマに照らしてしっくり来る4つのシナリオができればシナリオマトリクスは完成です。

著者プロフィール:新井宏征

スタイリッシュ・アイデア代表取締役。産業技術大学院大学 非常勤講師。

SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、2013年より現職。シナリオプランニングやプロダクトマネジメントなどの手法を活用し「不確実性を機会に変える」コンサルティングやワークショップを提供。東京外国語大学大学院修了。University of Oxford Said Business School Oxford Senarios Programme修了。

主な訳書に『成功するイノベーションは何が違うのか?』『プロダクトマネジャーの教科書』『90日変革モデル』(全て翔泳社)、主な著書に『世界のインダストリアルIoT最新動向2016』『スマートハウス/コネクテッドホームビジネスの最新動向2015』(インプレス)などがある。


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