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» 2017年06月05日 07時05分 UPDATE

VUCA時代の必須ツール「シナリオ思考法」:企業におけるシナリオプランニングの活用法 (1/2)

普段ではあまり考えない期間を設定し、現在は未来の延長ではないとの意識を持つようにする。

[新井宏征,ITmedia]

 前回の記事では、一般的な予測手法と比較してシナリオプランニングの特徴や、取り組む必要性を紹介しました。シナリオプランニングでは「未来は現在の延長ではない」という視点を持って、未来のことを考えるとお伝えしました。

 その記事を読んだ知り合いが、川崎重工がPLMシステム導入時にシナリオプランニングを使ったという記事を紹介してくれた上で、「ここで書かれているシナリオプランニングは、前回の記事で紹介していたものと同じなのか?」と質問をしてきました。

 結論から言えば、ここで紹介されているシナリオプランニングと前回の記事で紹介したものとは同じです。該当のプロジェクトで、具体的にどのように進めたのか詳細は分かりませんが、ITシステム導入に際してシナリオプランニングを活用する事例は弊社でも何度か経験があります。

 そこで今回は、改めてシナリオプランニングの定義を確認した上で、活用事例を紹介していきます。

シナリオプランニングの定義

 シナリオプランニングの定義はいろいろありますが、弊社では次のような定義を使っています(図1)。「シナリオプランニングとは5〜10年先の将来において起こり得る未来の可能性を複数描き、その結果を企業や個人におけるさまざまな検討の材料として利用する手法のこと」です。

図1:シナリオプランニングの定義と活用場面

 この定義から、肝となるポイントを3つ見ていきましょう。

 1点目は「5〜10年」という時間設定です。現在、弊社で取り組むシナリオプランニングではこの5年から10年という期間設定が最も多いのでこの数字にしていますが、実際は15年後や20年後といった、より長期の設定で行う場合もあります。

 どれくらいの期間設定にすべきかはプロジェクトの目的によって変わってきますが、共通しているのは「普段ではあまり考えない期間を設定する」という点です。そのような期間設定をする理由は、冒頭でも書いた「現在は未来の延長ではない」との意識を持ってもらいやすいようにするためです。

 2点目は「起こり得る未来の可能性を複数描く」という部分です。シナリオプランニングでは、複数の未来を検討することが特徴だという点は前回も伝えましたが、その未来はどんなものでも良いというわけではありません。2点目のポイントとして紹介しているように「起こり得る未来」を描くことが重要です。シナリオプランニングでは普段は考えないような長期的な未来について考えるため、必ず起こるような未来を考えても意味がありません。

 一方で、絶対に起きない未来を考えるのも時間の無駄です。確実に起きるわけでも、起きないわけでもないというその中間地点に位置付けられるような未来を見ていくことが大切です。そのような未来を描くことで「もし、これが現実になったらどうしよう?」と頭を働かせられるようになるのです。

 3点目は「その結果を検討の材料として利用する」という点です。特に企業でシナリオプランニングを活用する場合、5年後や10年後の未来の姿を複数描いて終わりではありません。描いた複数の未来を元に、会社や事業の行く末を考えるスタート地点にするのです。

 筆者がオックスフォード大学でシナリオプランニングを学んだ際、「シナリオプランニングで作ったシナリオはアウトプットではなく、インプットだ。作った未来シナリオをインプットとして、自社が何に取り組まなければいけないかを考えることが大切だ」と、口酸っぱく言われたことを思い出します。

シナリオプランニングの活用場面

 3点目のポイントとして、シナリオプランニングの結果を検討の材料とすることを伝えしましたが、実際にどのような検討を行えば良いのでしょうか。

 シナリオプランニングのビジネスでの活用は、ロイヤル・ダッチ・シェルが最初です。そのため、規模の大きい企業だけが使う手法だと思っている人も少なくありませんが、規模の大小にかかわらず活用することができます。弊社のコンサルティングにおける具体的な活用場面としては、図1に掲載した2種類です。

  • 現在の戦略や施策の妥当性を確認
  • 目指すべき未来を踏まえた施策を作成
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