なぜ、あの部下の報告や企画案はしっくりこないのか?:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
もしかしたら、その部下に足りないのは「本気度や、経験や、センス」ではなく、全ての職種に万能に使えるあの知識かもしれません。
一方で、このようなスキルは実は「勉強」だけではモノにできません。それは、なぜでしょうか? 身近な事例をもとに考えてみましょう。
ちまたにあふれる「知っているのに、使えない」
唐突ですが、私の5歳の娘はそろばんをやっていて、最近「掛け算」を暗記しました。「にいちがに、ににんがし……」というやつですね。で、結構暗記は進んで、本人も周りも「理解した」と思うわけです。テキストの計算問題も解けるようになりますしね。
でも、その娘は、レストランでメニューに並んだ2列×4行の写真を見たときに「指で数えていた」んですね。私が「掛け算使わないの?」って聞くと、キョトンとした顔をする。なので、「ほら、こっちが2でね、こっちが4でしょ。だから2×4で=8なんだよ」と教えてあげると、そこで初めて(指で数えなおして)「おおぉーー!」という感動を覚えていました。
そう。彼女は、暗記しているはずの掛け算の「使い方」は、知らなかったんですね。
「知っているはずの知識なのに、使えない」その理由はココにあります。いくら、学術で「法則」を覚えても、それでは実践には使えない。事例に当てはめたことで、イメージすることができたのではないでしょうか?
学校教育であれば「詰め込み型教育」などともいわれますが、この「ギャップ」こそ、マーケティングの世界でも起こっている事実です。
解決の要点は「自社ならどうするのか?」を意識して向かい合うこと
と、なると実務で使うために押さえるべき知識とは、つまり「活用のための実践論」です。「掛け算の暗記」という内容を覚えたのであれば、次は「掛け算の使い方」という知識さえあれば、僕の娘は「覚えた掛け算をどう使うか?」に話が昇華していく。
これを、マーケティングに置き換えれば、「学んだ知識」を「仕事に当てはめるとどうなるのか?」を意識すれば、「学んだ知識を、実践でどう使いこなすのか?」にシフトするのは、そんなに難しくありません。
そのため、「この知識を、どう自分の会社で使うのか?」という視点を持ちながら、読書をしたり、セミナーを聴講したり、可能であればイメージを常に持ち続けることが重要です。また、他社の事例なども「その事業者だから成立した」ことを忘れてはなりません。なぜなら、その事業者と貴社では「リソース」に違いが存在するからです。
持ち帰った知識を「実際に、仮説に基づいてはめて動かしてみること」こそ、が現在のマーケティングを中心とした、上位層やユーザーとのコミュニケ―ションで必要とされている「本当の知識」=「経験値」となるのです。
「マーケティングを勉強しました」は多くの人がいえることですが、本当に実践にかなう知識とは「体験」無くしては語れません。少しでもその体験を増やすためには「机上の空論」であったとしても、ロジック・ファクト・数字により評価を受け、カタチにすること。このプロセスを「愚直」に行使できた人は、自然と一人前のマーケター(ビジネスパーソン)として成長していくのです。
また、そのような「マーケティング全般に関わる実践的な知識」は、これから多くの企業でも求められるスキルとなるでしょう。
なぜなら、人生100年時代において、最終的に個々人がプロモーションをするための素材は「自分」になっていくからです。あなたが、会社で高い地位に就き、企業の外でも求められるには、「あなた自身のマーケティング/プロモーション」が必要不可欠なのです。
本書では、「ロジック・ファクト・数字」を元にした「仮説立案」の手法について、さまざまな角度から触れることを意識しました。12年をマーケティングにささげてきた、先輩マーケターからの「心構えの引き継ぎ書」のようなものです。
目前に迫った「個人の時代」に向け、大手を振って「自分とは何者である」と語るためにも、「実践的なマーケティングの鉄則」を身に着けておきたいものです。
著者プロフィール:デ・スーザ リッキー
Webディレクター経験を経てから3社計12年のマーケティング経験を持ち、各事業者にて、前年比3倍、前月比700%などの数々の実績を出したプロマーケター。
ADTECH(関西)やMarkeZine、Web担当者Forumなど、大型イベントの登壇実績多数。2018年末から「日本にマーケティングが自走できる会社を育てる」ことを目的に独立。各企業でマーケティングの専属顧問になるなど事業を展開している。2019年、自身初となるビジネス書籍「ひと目でわかるマーケティング」を上梓。
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