日本の失われた30年で、最も失われているのは「ビジョン」だ:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
世界や時代の状況に対応するだけで手いっぱい。そんな悪い意味でのリアクション芸人のような企業、組織になっていないか。リーダーなら、そう問うところから始めてほしい。
人口減少を前提とした「未来像、施策、ステップ、企業や経済の在り方」に対して、企業あるいは国や行政または学者、有識者が示している明確なビジョンを、どなたかご存じでしょうか。
私が見聞した範囲、現時点ではという注釈付きですが、残念ながら、この国の行き先と構想を明確に指し示しているビジョンを見たことも聞いたこともありません。
問題を認識している人はいるでしょう。しかし、その問題を前提として、どういう理想を追求するのか、どう経済は、社会は、教育は、政治はあるべきなのか。次代のビジョンはまったく見えていないのです。ゆっくりとした坂を下りる私たちだからこそ、国、地域、企業全ての場所に心が躍るようなビジョンが必要なのです。
私が定義するビジョンは「売上何千億円」とか「シェアNO.1」とかいうような企業内のこぢんまりとした目標ではありません。なぜならビジョンとは文字通り映像であり、もっと言うなら広く共有された明確な未来像であるべきだからです。それも、特定の個人や組織に宿りつつ、それを聞いた誰もが共感するような「公共的な未来像」こそが、ビジョンと呼べるものなのです。
Googleが、世界中の情報を整理して誰もがアクセスして使えるようにする、というビジョンを発表したときに、世界の多くの人がわくわくと胸を躍らせたことと思います。私もその一人でした。「技術者のための理想工場」を打ち立てると、戦後間もなく、若き井深大が、のちのSONYの設立趣意書を書いたとき、技術者たちも、そこに関わる人々も奮い立ったことでしょう。ビジョンとは、本来そうあるべきものなのです。
「THE VISION あの企業が世界で急成長を遂げる理由」は、まず第一部で、時代の振り返りと世界で急成長を遂げる企業がどのようなビジョンを持って、どのような仕組みで成長しているのか。そして、日本の大企業からスタートアップまでがどのような立ち位置でビジョンを描いているのか。またこれからの時代の流れはどのように未来に向かっているのかを解き明かしています。
第二部では、ビジョンの実践的、実際的なつくり方さらには企業の中でのビジョン浸透、活用の仕方を詳細に紹介しています。たぶん、ここまで具体的に書いたものは洋書も含めて、ほとんどないと自負しています。
ビジョン?そんなものが国や企業に必要なのか?と思う方にこそ読んでほしい。そんな熱を込めて仕上げています。ぜひ、手に取ってみてください。
著者プロフィール:江上隆夫(えがみ たかお)
ブランド戦略コンサルタント、株式会社ディープビジョン研究所 代表取締役
大手広告代理店ADK(旧アサツーディ・ケイ)にてコピーライター及びクリエイティブ・ディレクターとして、さまざまな業種の企業広告キャンペーンやブランド構築にかかわる。朝日広告賞、日経広告賞グランプリ、日経金融広告賞最高賞、東京コピーライターズクラブ新人賞ほか数多くの受賞で評価を高め、2005年に独立。本質からブランドを組み立てる」というアプローチで、全国の中小企業から大企業までのブレンドづくりを担っている。著書にロングセラーになっている『無印良品の「あれ」は決して安くないのになぜ飛ぶように売れるのか』『降りてくる思考法』(いずれもSBクリエイティブ社刊)。開発商品に発想支援の「イノベーションカード」(デキル。株式会社/イノベーションデザイン協会)などがある。
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