どんな時代でも変わらない「働く」ことについての大切なこと:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
これからはキャリアは短いけれど、長い期間働くことを意識しなければならないだろう。そのためにはどのような心掛けが必要だろうか。
キャリアを考える際には、相談する方の状況を鑑み、「生き残る」ことと「幸福」になること、どちらのベースがいいのか考慮するとともに、できれば双方を統合することが有効であると考えられます。それは時代が変わっても変わらないことだと確信しています。
統合させるための5つの観点
「生き残る」ことと「幸福」になることを統合させるためには、今日の充実を明日の準備につなげていくというスタンスが大切になっていきます。明日のために今日を我慢すれば、我慢だらけの人生になります。一方で、今日だけ楽しければいいとなれば、刹那的になり、明日を迎えることができなくなります。
「生き残る」ことと「幸福」になること、換言すれば、今日と明日をつなげていくためには、以下の5つの観点がヒントになります。
1つ目は「合う仕事を選ぶ」ということです。言うのは簡単ですが、「合う仕事」はすぐに見つかりません。複数の仕事をしてみてはじめて、この仕事は合うけど、この仕事が合わないということが分かってきます。そのためには、若い頃は「合う仕事」を見つける期間であるといえるでしょう。「合う仕事」が見つかることが「生き残り」と「幸福」の前提になります。「合う仕事」とは、職業だけではなく、職場や上司や会社も含まれています。仕事が合うと思っていても、職場の仲間や上司と合わなければ会社に行くのはつらいことですし、会社が向かう方向に共感できなければ、その会社で仕事を続けていくことは難しいと思われます。
2つ目は「仕事を自分に合わせる」ということです。合う仕事を選んだとしても、その仕事の中には、あまり楽しくないタスクが含まれています。仕事はタスクの集まりです。そして、タスクの中に、好きなタスクと嫌いなタスクがあります。仕事は短期に変えられないかもしれませんが、タスクは周りの人と交渉することによって、変えることができます。好きなタスクを多くし、嫌いなタスクを少なくするということを行うことによって、より仕事を自分に合うようにデザインすることができます。
3つ目は「仕事を学びに変える」という観点です。成人学習理論によると、大人は経験によって学びます。仕事は仕事であり、学びではありません。しかし、意識することで学びに変えることができます。毎日やっている仕事を少しでも改善するように意識することで、仕事を楽しめるようになり、かつ熟達につながり、自らの生き残りに寄与することになります。
4つ目は「目的を置く」という観点です。「目的を置くこと」の、最も効用があるもののひとつは、承認欲求に関わることです。人は、他者から承認がないと生きていけません。そのため、他者からの承認が欲しくて、他者の期待を気にするようになります。友達の声に右往左往。上司の声に右往左往。そのような人は浮き草のように見えます。頼りにならない人に見えます。一方で、自分なりに目的を持っている人は、魅力的に見えますので、自然に周りから認められていきます。
5つ目は「リフレクションでの工夫」という観点です。日々、人はうまくいかなったことを悔やみ、うまくいったことにほくそ笑みます。そういう意味で、自然にリフレクションをしていますが、そこにひと工夫をすることで、学びと満足につながります。私たちのリフレクションは、ダメなところを探しがちです。しかし、うまくやれたこともたくさんあるはずです。うまくやれたことをしっかりと褒めてあげる、そして「ここだけはあらためよう」というネガティブフィードバックをかけることで効果的なリフレクションを行うことができます。ダメな自分といいところの自分、どちらも受容することで、学びと満足、つまり「生き残る」ことと「幸福」になることの統合が図れることになります。
いかがでしょうか。いずれも実行するのは簡単ではありませんが、アドバイスをする際に、あるいは、自らのキャリアを考えるにあたっては一考に価するのではないかと思います。ぜひ5つの観点を活用してみてください。
著者プロフィール:古野庸一
リクルートマネジメントソリューションズ組織行動研究所 所長
1987年東京大学工学部卒業後、株式会社リクルートに入社。南カリフォルニア大学でMBA取得。
キャリア開発に関する事業開発、NPOキャリアカウンセリング協会設立に参画する一方で、ワークス研究所にてリーダーシップ開発、キャリア開発研究に従事。2009年より現職
著書・訳書として『「働く」ということについての本当に大切なこと』(白桃書房)『「いい会社」とは何か』(講談社現代新書) 『日本型リーダーの研究』(日経ビジネス人文庫)『ハイフライヤー―次世代リーダーの育成法』(プレジデント社)など。論文として「『一皮むけた経験』とリーダーシップ開発」(共著、『一橋ビジネスレビュー』2001年夏号)など
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