トーク番組は切り口が勝負です。トーク番組で情報を語っても、まったく面白くありません。トーク番組で面白いコメンテーターは、自分の切り口を持っている人です。
情報ではインターネットに勝てません。読者が一番求めているのは、切り口です。情報化社会になる以前は、情報に値打ちがありました。今は情報そのものに値打ちはありません。大切なのは、その情報をどう切るかです。
これが伝えるということなのです。
誰もが知っていることを、誰もが気付かなかった切り口で話す
誰もが知らない情報には興味が持てません。「あるある」がなくて、共感性が持てないのです。
危機管理の話で、「曲がり角を曲がった時にヤリで突かれたらどうするか」という話は、ヤリを持っている国では有効ですが、今の日本にはいらない情報です。
誰もが知っている情報を、誰もが知っている切り口で書くのは、ただの正論です。大切なのは、誰もが知っている情報を、誰もが知らない切り口で語ることです。伝えるポイントは、ジャンルではなく、切り口なのです。
商品のよさよりも、いかに相手と関係があるかを話す
商品の機能がどんどん増えています。「こんなに機能があって、お得です」と言われても、自分に関係ない機能は意味がないのです。
シャンプーのコマーシャルをつくる時に、「このシャンプーを使うと、髪の毛がツヤツヤになります」と言っても、スキンヘッドの人に意味はありません。「このシャンプーを使うと、フケがごっそり取れます」というのも、求められていません。フケを集めているわけではないからです。
求めているのは、それを使った結果、どういうメリットがあるかです。「髪の毛がツヤツヤになる」「フケが取れる」というのは、途中のプロセスであり、手段です。
例えば、モテたいと思っている人にとっては、「このシャンプーを使うとモテる」というのは、自分に関係があります。一方で、モテたいと思っていない人にとっては関係ないのです。
自分の話に聞き手がいかに「関係性」を感じてくれるかです。自分に関係のない話は、一切興味がありません。「自分に関係がある」と思った瞬間、聞きたくなります。
一番聞きたいのは、どんなにすごいかということではありません。自分に関係があるかどうかです。360度話せる話でも、相手に「これは自分と関係がある」と思ってもらえるように切り口を変えていきます。
大切なのは、誰に向かって伝えるかです。
例えば、「お掃除ロボットを使うと部屋がきれいになる」というのは、まったく意味がありません。それはロボットの機能です。つくり手としては機能を語りたくなります。
買う人は、部屋がきれいになることは求めていません。求めているのは、お掃除ロボットを使うことで掃除の時間が節約できて、子どもと一緒に散歩に行けるとか、ママ友と女子会に行けるとかです。機能は関係ないのです。
話す時は、その話と相手の関係をつなげることが大切です。相手との関係性をどう見つけ出すかです。商品を語っても見つかりません。まずは相手の話を聞くことで、「それはこの商品がピッタリ」というところに持っていけます。
1分しか話せないとしたら、50秒は相手に話させます。その50秒間で、「子どもと一緒に遊ぶ時間がない」「犬の散歩に行く時間がない」という話を聞くのです。
これは配分の問題です。切り口とは配分のことです。いい商品ほど配分をしくじって、伝え方で失敗するのです。
著者プロフィール:中谷彰宏 作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『1分で伝える力』(リベラル社)など、1070冊を超す。
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