60代でしなければならないこと:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
この本は、60代だけに向けて書かれた本ではなく、全ての「60代症候群」の人に向けて書かれている。
何かに迷う時も、どちらが正しいということはありません。端的に言うと、ランチのA定食とB定食がある時に、どちらが正しいかという質問に意味がないのと同じなのです。「どっちが正しいか」と、聞かないことです。
「自分らしくないこと」が、自分を広げる
自分らしさにしがみつくと、不安が生まれます。自分らしさは考えなくてもいいのです。みんな「自分らしさ」と言いながら、みんなが考える正解に行ってしまいます。正解がつまらないのは、誰にとっても同じだからです。
日本哲学の中の「奇」は、ほかの人と違うことをすることです。60歳を過ぎて会社を辞めた時に、これから何をすればいいのか分からない人は、「今までと違うことをしよう」と考えるだけで、するべきことが明確になります。
今までしてきたことは先が見えています。同じような仕事を続けたとしても、今までと違うやり方をしてみることです。これが60代でリセットしていく一つの生き方です。
同じやり方を続けていると、その人はどんどん老化していきます。老化しないで人生を楽しんで生きている人は、今までと違うやり方をしているのです。
ピカソにしても北斎にしても、あれだけコロコロ画風を変えています。今までと違うやり方を何かできないかと常に考えていたからです。
60歳までは会社でうまくいっていたのに、60歳を過ぎて一気に楽しそうに見えなくなる人がいます。その人は、運を使い切ったからではありません。60歳を過ぎても今までのうまくいったやり方を続けることの面白くなさがあるのです。
うまくいくかどうかは関係ありません。今までと同じやり方を続けることが、人間の中にワクワクを生まなくなります。
今までと同じやり方は、ラクはラクです。一見、ストレスがないように見えますが、長い目で見ると、小さなストレスが積み重なっていくのです。
何をすればいいのか分からなければ、何でもいいから今までと違うことをします。または、同じことでも違うやり方をしてみます。違うことをすれば、必然的に違う自分になります。
同じことを違うやり方ですることで、今まで気付かなかった新たな自分に出会うキッカケになるのです。今までと、違うことをすることで、楽しくなります。
ヘトヘトになるものが、ワクワクする
高校生は学校から帰ってくると、みんなヘトヘトです。夜は爆睡で、気絶するように寝ています。
60歳を過ぎると、ヘトヘトにもならないのです。逆に、ヘトヘトになれる人は、ワクワクするようなことができている人です。
ヘトヘトには、
(1)肉体的なヘトヘト
(2)脳的なヘトヘト
の2通りがあります。
60代には、どちらかというと、脳的なヘトヘトになるのがオススメです。そのためには、今までしたことのないことをすればいいのです。今までしていたことを続けていると、脳は疲れないで、体だけがヘトヘトになっていきます。
私は、週1でコアトレーニングをして10年になります。1週間の中で、コアトレのある曜日が山場です。コアトレの1時間は永遠の1時間に感じます。「こんなに難しいことは僕の中でない」と思うぐらい、先生に厳しく鍛えられています。
その時に思い出すのは、私の母親がスパルタだったことです。小学校1年生の時に、母親に腕立て伏せと逆上がりの特訓をさせられました。それを思い出して、「今、僕がさせられているこの特訓ってなんだろう」と思うのです。
自分でも情けないのは、何も難しいことはしていないことです。先生は軽々としているのに、自分の中ではムチャクチャ難易度が高いのです。
正解が分かっていてできないのではありません。正解が皆目分からないのです。先生に「もう少しレベルを下げて、基本のところからお願いします」と頼んだら、「これより下はありません。これは脳梗塞をやったおばあちゃんがすることです」と言われました。
コアトレが終わって帰りに靴を履こうとすると、靴のひもが結べません。靴のひもの結び方が分からなくなるぐらい、脳がヘトヘトになっているのです。
ここにワクワクがあります。脳がヘトヘトにならないで、気持ちだけワクワクしようとしてもムリです。ワクワクしたければ、したことのないことをして脳がヘトヘトになることが大切なのです。
著者プロフィール:中谷彰宏 作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。全国で、セミナー、ワークショップ活動を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気づきを促す、全員参加の体験型講義。
著作は、『60代でしなければならない50のこと』(ダイヤモンド社)など、1070冊を超す。
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