なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進:ITmedia エグゼクティブセミナーリポート(2/2 ページ)
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、リモートワークなどの新しい働き方が進んだ一方、情報システム部門の負荷が高くなったことが、企業のDX推進を阻害する要因の一つ。この課題を解決するために立ち上げたラクスルの新規事業とは。
ジョーシスの事業は、株式会社Tooとの協業により展開。ソフトウェアは、インドで開発。開発体制のグローバル化により、より一層のサービス向上を目指している。ITデバイス管理では、ジョーシス内のEコマースサイトでPCの調達が可能。調達したPCは、各社の環境に合わせてキッティングを代行する。誰がどのITデバイスを使っているのかをリアルタイムにデータベースで管理することができる。
またSaaS管理では、アカウントの作成、権限設定、削除を一括で管理することが可能。SaaSの契約数、契約コスト、誰にどのアカウントを発行しているかも容易に把握できる。使っていないSaaSの契約を解除することで、コストの最適化も可能。退職した社員のアカウントデータを、ほかの社員に移管する作業も管理画面から1クリックで完結できる。現在、約40種類のSaaSと連携しているが、2021年中には100サービス以上に対応する予定という。
松本氏は、「ジョーシスのミッションは、“職場を良くするために働く人”の可能性を解放することです。セールス、ビジネス、エンジニアなどのサービスを開発する担当者ではなく、人事、総務、コーポレートIT、情報システムなど、バックオフィスの職場環境を改善する担当者の可能性を開放し、よりクリエイティブな仕事をしてもらうことを目指しています」と話している。
DXにより日本社会の生産性を向上し、競争力を強化
現在の日本企業には、数多くの非効率が残っている。先人たちが築いてきた仕組み、作り上げてきた日本経済は素晴らしいものであり、日本の社会の発展を支えた世界に誇る仕組みであるが、その一方でグローバル市場においては非効率な部分も残っている。
OECD加盟国で、日本はもっとも生産性の低い国の1つで、このように生産性が低い状態では賃金も上がらず、豊かな国であり続けることは困難だ。新しい仕組みで、より新しく付加価値の高い仕事ができる、誰も取り残さない社会を作ることが必要だ。新しい産業を作るのではなく、いまある産業をソフトウェアやインターネット、AIなどの新しいテクノロジーを使って再定義することで、企業のDXを推進し、社会課題を解決し、その結果として、日本社会の生産性を向上し、競争力を強化できるはずである。
ラクスルでは、DXには(1)システムインフラ、サーバ、データベースなどをオンプレミスからクラウドに移行する分野、(2)会計などの普段の業務プロセスそのものをクラウド化していく分野、(3)ビジネスモデルそのものを変革する分野、(4)研究開発の分野の大きく4つの分野があると定義している。
松本氏は、「全ての企業が直面する生産性の向上、セキュリティの強化は、インフラのDX、業務のDXにより実現できます。ラクスルでは、コーポレートITの担当者をエンパワーしていく第4のサービスであるジョーシスの提供を開始しています。サービスとしてはスタートラインに立ったところで、今後お客さまと一緒にサービスを育てていきたいと考えています」と話し、講演を終えた。
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