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相手が思わず契約したくなる提案の進め方とは(2/2 ページ)

多くの営業マンの営業先での提案の進め方を分析すると、重要な要素が抜けていることが多い。それは「質問」で、成約率は質問の重ね方に大きく左右される。

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 両者を比べた場合、商品により大きな価値を感じるのはどちらの説明だろうか。前者の説明により大きな価値を感じる人が多いのではないだろうか。

 お客さまにとって重要なことは、その商品が「どういう商品であるか」より、「自分のニーズを満たしてくれるのか」ということである。

 ただ、多くの営業マンはパンフレットを広げて自社の商品が「どういう商品であるか」を説明する。

 一方で、私がこれまで見てきた記録的な営業成績を残している営業マンは、自社の商品が「お客さまのニーズをどう満たすか」を説明する。

 彼らは、ニーズを把握するための質問の重ね方がうまい。さまざまな角度から質問を重ね、お客さまのニーズを網羅的に深く把握する。そして、そのニーズの内容に沿って提案を進める。

ニーズを把握する上での意識の持ち方

 お客さまのニーズを効果的に把握する上で意識して欲しいのが、お客さまは何らかの「目的」を果たすための「手段」として商品を購入するということである。

 自社の商品は何らかの目的を達成するための手段であるという意識を持てると、自然とお客さまの購入の目的を把握し、その目的に沿った形で商品の提案をしようとするだろう。

 例えば、Webからの集客を強化したいと思い、HPのリニューアルに関して相談にきた場合、そのお客さまの目的は「HPのリニューアル」ではなく、「集客」である。

 そして、「HPのリニューアル」は「集客」の目的を達成するための手段である。

 限られた提案の時間の中で、購入の目的である「集客」を軸に自社の強みを説明するか、HPのリニューアルに関する全般的な話をするか。

 いずれの提案の成約率が高いかは、容易に想像がつくだろう。

 「自社の商品はあくまで手段である」

 この意識が習慣化すると、お客さまとのコミュニケーションは変わる。それに伴い、成約率も変わる。

購入の目的に関する質問が持つさらなる意味

 また、購入の目的に関する質問は、お客さまに購入の必要性を再認識してもらうことができるという意味も持つ。購入の目的について質問し、その目的を話してもらう過程で、お客さまの頭の中ではその目的が整理されていく。

 目的が整理されると、その目的を達成しなければならない理由が明確になりやすい。そして、その理由が明確になると、目的を達成しようとする動機が強くなる。それによって商品を購入する必要性を再度認識してもらうことができる。

 これが購買意欲を高めることにつながる。さらには、この質問をすることは、信頼を得る上でも重要な意味を持つ。

 お客さまが商品に満足感を覚える時、それは購入の目的が満たされた時である。

 「売った後のことは知らない」「取りあえず売れればいい」というわけではなく、購入後に十分満足してもらいたい。

 購入の目的を丁寧に把握しようとする姿勢から、お客さまがその気持ちを感じとってくれれば、信頼は増す。

 その信頼が成約率をさらに高める。

 これまでコンサルティングや経営心理士講座での講義を通じて経営者や営業職の人にこのニーズを把握する質問を詳細に伝えているが、うまく活用できている人は成約率が大きく上がっている。

 なかには、「問い合わせがあった際の成約率がほぼ100%になった」という人もいる。

 それほどニーズを把握する質問は成約率を左右する。

 営業の中でまだ質問を使いこなせていないという人は、見方を変えればそれだけ大きな伸びしろがあるということだ。

 この記事でお伝えした内容が、今後の成約率向上につながれば幸いである。

著者プロフィール:藤田耕司(Koji Fujita)

経営コンサルタント、公認会計士、税理士、心理カウンセラー、一般社団法人日本経営心理士協会代表理事、FSGマネジメント株式会社代表取締、FSG税理士事務所代表。

19歳から心理学を学び、心理カウンセラー等の複数の心理系の資格を取得。2011年に監査法人トーマツを退職し、コンサルティング会社と会計事務所を設立。人材育成から労務問題、採用、営業、マーケティングまで幅広い分野で、これまでに1,000件超の経営相談を受け、心理学を活用した経営改善を行う。また、これまでの経営改善事例から経営者の心理、部下の心理、顧客の心理、自己の心理を分析し、経営心理学として体系化することで、経営指導の成果を大きく高める。その成果が口コミで広がり、日経新聞をはじめ複数のメディアから取材や講演依頼を受ける。年間の講演回数は250回超。著書に『リーダーのための経営心理学』(日本経済新聞出版社 日本、台湾、韓国の3か国で出版 )、『経営参謀としての士業戦略』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。


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