40代 「進化するチーム」のリーダーは部下をどう成長させているか:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
リーダーの役割は、チームを強くすることではなく、自ら進化するチームを作ること。どうすればいいのか。
例えば、英語の勉強は、英語研究者以外にとっては手段です。いつの間にか英語の勉強を目的化してしまうと、40代、50代になって「やっぱり英語を勉強しないといけないと思うんですよ」と言ったりします。そういう人に、「英語で何をするんですか」と聞くと、「特に目的はないけど、勉強しておかないといけないと思う」と答えます。
これは「手段が目的化している人」です。
実際、いきなり海外に転勤して英語を使わざるをえなくなったり、部下に外国人が来たりした人は、カタカナ英語でもとにかく覚えます。英語は、目的ではなく手段と割り切る方法で上達することができるのです。
チームがメリットでのつながりから、リスペクトでのつながりに。
新しい時代に強いチームは、つながりの基準がメリットではなくリスペクトです。この時、「うちの部下はリスペクトしていないんですよ」と、古いリーダーに勘違いが起こります。
この発言は、上司が部下を見下しています。上司から部下に対するリスペクトがありません。本来、リスペクトでつながるのは両者(トゥーウェイ)です。部下が上司をリスペクトするのと同じように、上司が部下をリスペクトする関係が必要です。
これは上司と部下だけではありません。
例えば、お客さまとお店もリスペクトの関係が求められます。お店が値段を安くしていくと、お客さまは「あの店は安いから行く」となります。そうすると、お店側はお客さまをリスペクトできません。「安いから来るお客さま」と、少し侮った感じになります。
一方で、味にこだわり、手間をかけすぎて赤字になっているお店もあります。京都にあるパティスリーのお店は、イートインコーナーで試食ができます。つくったお菓子の半分を試食してもらいながら、感想を聞く。喜んでもらうことで、新しいアイデアを研究する材料にしています。
このお店は、もうけを完全に度外視しています。ここでお客さまはお店に対してリスペクトを感じます。お店側も「全国からうちのお菓子を食べに来ていただいている」と、お客さまにリスペクトがあります。
安い方がいいという時代は、お客さまとお店は両者でリスペクトがなくなり、働くスタッフもリスペクトがなくなります。
もう1つ、便利さも同じです。
あのお店は便利だよね」というのは、リスペクトがなくなります。ITが出てきてから、どんどん便利になっています。
便利さの幸福感は一瞬で終わります。
以前は、本を頼んで翌日届くことにビックリしていました。ところが、当日に届くサービスが出た瞬間に、「エッ、明日? 今日届かないの?」という不満になります。便利さは、どこかで反転して、ありがたみをなくしていくのです。
これからチームを強くするコツは、リーダーが部下に対してリスペクトすることです。リーダーが部下のことを「若いのに頑張っている」「この難しい状況でよく頑張ってくれている」と思えるかどうかが強いチームかどうかの分かれ目です。
サッカーの試合で負けても、監督はコメントを求められます。例えば、「あいつがあそこでミスしていなければ」と言うと、その監督は選手からの信頼がなくなります。その後、選手は完全に萎縮して、チャレンジをせず、ミスしないように動こうとします。
たとえ選手がエラーをしても、「同点でいい戦いではなく、より強い相手に勝つためにあそこは攻めなければいけなかった。あの難しい中でよくチャレンジしてくれた」と、チャレンジ精神を評価すればいいのです。
会社でも、そういうリーダーは部下から信頼されます。上司と部下のリスペクト関係では、部下が信頼してくれたら、上司も部下を信頼するという順番ではありません。まず先に、上司から部下をリスペクトすることが大切なのです。
著者プロフィール:中谷彰宏・作家
1959年、大阪府生まれ。早稲田大学第一文学部演劇科卒業。博報堂勤務を経て、独立。91年、株式会社中谷彰宏事務所を設立。
【中谷塾】を主宰。セミナー、ワークショップ、オンライン講座を行う。【中谷塾】の講師は、中谷彰宏本人。参加者に直接、語りかけ質問し、気付きを促す、全員参加の体験型講義。
著作は40代「進化するチーム」のリーダーは部下をどう成長させているか(彩流社)など、1090冊を超す。
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