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第3回 ドラッカー「 いま上司に求められている仕事」ドラッカーに学ぶ「部下を動かそうとする考えは時代遅れ」(2/2 ページ)

いま、上司が迫られている改善とは何か。会社や部下に悩みを抱えているあなたの良きヒントとなれば幸いだ。

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 トップマネジメントが、この問いについて徹底的に検討を行い、答えを出しておかなければ、上から下に至るあらゆる階層の者が、それぞれ相異なる両立不能な矛盾した事業の定義に従って決定を行い、行動することになる。

ピーター・ドラッカー

 「どんな想いで事業を行っているのか」「どんな考えで事業を行っているのか」「どこに向かい、何を成し遂げようとしているのか」といったことが曖昧であれば、部下は曖昧な考えを残したまま、仕事をすることになる。その曖昧さは、働く人のモヤモヤとなり、仕事内容に対する不満となっていく。

事業の根幹を問いただす

 会社としてのものの見方、理解、方向づけが定まっていなければ、現場は、どんなにコミュニケーションに力を入れても、意味のない会議をただ繰り返すだけとなる。では、具体的にどうすればいいのだろうか。

 ドラッカーはさらにこう言っている。

あらゆる組織において、 共通のものの見方、理解、方向づけ、努力を実現するには、「われわれの事業は何か」 を定義することが不可欠である。

ピーター・ドラッカー

 定義するとは“決める”ということだ。まずは、トップマネジメントがそれらについて、徹底的に検討を行い、事業に対する考えを明らかにしなければならない。

部下を自己実現に導く

人が仕事に価値を感じる5つのこと

 私たちは、仕事で全力を尽くすためには、「全力を尽くす理由」が必要だ。また、仕事が人生にいい意味をもたらすものでなければ、その仕事を続けることはできない。人材の流出を食い止めるためには、どうすればいいのだろうか。5つある。

 ドラッカーはこう言っている。

第一に、組織が何をしようとしており、どこへ行こうとしているかである。

第二に、責任を与えられ、かつ自己実現することである。

第三に、継続学習と継続訓練の機会を持つことである。

第四に、自らの専門分野が敬意を払われることである。

第五に、その専門分野では自らが決定を行うことである。

ピーター・ドラッカー

 ドラッカーがここで第一に挙げているのは、理念、ミッション、ビジョンに基づいて事業が行われているかどうか。美しいミッション、ビジョンを掲げているか、ということではない。トップマネジメントをはじめ、幹部が腹の底からそう思っているかどうかだ。そして、第二にあげている自己実現とは、「仕事を通して喜びを実感できている状態」のことだ。そして、第三には、仕事を通して成長できるか、ということだ。働く人はこれら5つのことを必要とする。

業務の情報共有より事業の意思疎通

 上司は、部下と業務の情報共有は日頃行っている。しかし、事業の意思疎通は日頃行っていない。いま上司に求められている仕事は、部下と事業について話し合い、事業に対する理解をつくり出すことだ。それが、「組織が何をしようとしており、どこへ行こうとしているか」を明らかにすることになり、部下を自己実現に導くことになる。そして、部下の自らの成長を促すことになる。

いま上司に求められている仕事

 いま上司がやらなければならない仕事は、管理することでも、命令することでもない。部下に、働きがいを提供することだ。会社の想い、会社の考え、会社の方向性を伝えることである。そして、それを部下に理解してもらうことである。それが、部下を正しく方向付けすることになる。それが、部下にとって働く意欲の源泉となる。それが、優秀な人材の流出を食い止めることになる。

著者プロフィール:山下淳一郎 ドラッカー専門の経営チームコンサルタント

ドラッカー専門の経営チームコンサルティングファーム トップマネジメント

東京都渋谷区出身。ドラッカーコンサルティング歴約33年。外資系コンサルティング会社勤務時、企業向けにドラッカーを実践する支援を行う。中小企業の役員と上場企業の役員を経て、ドラッカーの理論に基づいた経営チームをつくるコンサルティングを行う、トップマネジメントを設立。現在は上場企業に「経営チームの研修」「経営幹部育成の研修」「後継者育成の研修」を行っている。 

著書に『ドラッカーが教える最強の後継者の育て方』(同友館)、『ドラッカー5つの質問』(あさ出版)、『新版 ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(同友館)、『日本に来たドラッカー 初来日編』(同友館)、『ドラッカーが教える最強の経営チームのつくり方 』(総合法令出版)、『ドラッカーのセミナー』(Kindle)、『ドラッカーが教える最強の事業承継の進め方』(Kindle)がある。主な連載に『ドラッカーに学ぶ成功する経営チームの作り方』(ITmedia エグゼクティブ)がある。ほか多数。


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