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第3回 「ブランド」は来期以降に持ち越せる簿外資産「売上の地図」に学ぶ、売上づくりの極意(2/2 ページ)

企業のエグゼクティブの中には、自社のブランドに強い想いを抱く人も多いだろう。そこで、今回は「売上の地図」からブランドと売上の関係について解説する。

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 しかし、冷静かつ客観的に考えてみよう。今期実施した施策が当たったものの、購入は来期になった。または前期の施策が今期の売上につながった例などいくらでもあるだろう。であるならば、施策の評価は「今年度の経営成績を明らかにするP/Lだけではなく、単年度の経営成績が上書きされていくB/S(貸借対照表)の観点でも行うべきだろう。今期に実施し、今期中にリターンが回収できる(すべき)費用的施策は、P/L思想で今期中に評価。今期に実施するが、リターンは来期以降も中期的に続く投資的施策は、B/Sの思想で中期的に評価すべきである。


図2:ブランドマーケティングは「資産づくり」

図3:P/LとB/S

 ブランドとは、ヒト、モノ、カネ、情報と同様、多ければ多いほど有利になる経営資源であり、大きければ大きいほど有利でレバレッジも大きくなるビジネスの元手(資本)である。同時に、来期以降に持ち越せる資産でもある。ブランド価値は、B/Sに金額として記載されないオフバランス(簿外)の要素だが、ビジネスやマーケティングの現場では売上に大きな影響を与える大きな変数なのである。

ブランドが「明日の売上」をつくる

 ソーシャルメディア以前、ブランドは「つくるもの」だった。しかし、あらゆるモノやコトが消費者間で共有されるソーシャル化した経営環境の中では、ブランドは「つくられるもの」と認識したほうが正しいように思う。消費者が持つどんな未充足ニーズを解決するコアバリューを提供するのか、そしてそれは消費者の側から見て、本当に提供ができているのかを愚直に問い続け、改善を積み重ねた企業だけがブランドという資源、資産、資本を増やすことができ、中長期にわたって強い競争優位性を有することができる。

 ブランディングやブランドマネジメントとは、「今日の売上」を最大化させる費用的施策ではなく、「明日の売上」を増やす投資的施策である。どちらが良い、悪いという話ではなく、位置付けが違うのだ。あなたが、中長期的な競争優位を獲得または維持・向上させたいと願うなら、ブランドへの投資は不可欠である。そして、ブランド価値は、一過性の広告やPRによって形成できるものではなく、既存顧客の評価やブランド体験の積み重ねによる影響を大きく受けるもの、つまり小手先でどうこうできるものではないことを強く胸に刻むべきだ。

 ブランドは、マーケティングコミュニケーションだけで取り組むテーマなのではなく、企業経営やビジネス全体として向き合う経営テーマなのだ。

 ぜひ、他の地図についても拙著『売上の地図』(日経BP)で学び、売上づくりに迷走しないための「自分だけの地図」を手に入れてほしい。

著者プロフィール:池田紀行(いけだ のりゆき)

株式会社トライバルメディアハウス 代表取締役社長

1973年横浜出身。ビジネスコンサルティングファーム、マーケティングコンサルタント、クチコミマーケティング研究所所長、バイラルマーケティング専業会社代表を経て現職。大手クライアントのソーシャルメディアマーケティングや熱狂ブランド戦略を支援する。日本マーケティング協会マーケティングマスターコース、宣伝会議講師。著書に、『次世代共創マーケティング』(SBクリエイティブ)、『キズナのマーケティング』『ソーシャルインフルエンス』(アスキー・メディアワークス)など著書・共著書多数。


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