第7回:その「1on1」、間違ってませんか? はやりのHR施策が的を外しているケース:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
猫も杓子もという感じになってきた「1on1」だが、中には「なんちゃって1on1」「勘違い1on1」も多く、逆に組織問題となっているケースも散見される。
調べたいことはすぐネットで分かるし、自分がSNSで発信したことはすぐに「いいね」がつく。「既読」がつく。まさにリアルタイムフィードバックを受けてきた世代にとって、月1回でも「既読スルー」と感じるのではないでしょうか」。
人事主導の生真面目な1on1は、本来の1on1ではない?
いま人事主導で各社で導入されている1on1は、ある意味、非常に日本風と言いますか、生真面目に形式をカチッと決めて実施するようなものが多いように見受けられます。しっかりアジェンダなども固めた上で、月に1回、あらかじめ日程を決めて「ミーティングをやりましょう」という形になっている。小杉さんは、これは本来の1on1とはかなり違っていると指摘します。
小杉さんいわく、「短い時間でも、ネット越しでも、どれだけ“触れ合えるか”“様子が分かるか”ですよね。もともと1on1とは、リアルタイムフィードバックとして、“非常に高い頻度かつ短い時間でやる”というものなのです」
1on1というものは本来、「最近どんな感じかな?」とか「ちょっと行き詰っていないかな?」「様子を見てみよう」といった軽い感じで行われるもの。そして「メンバーの話を聞く」ということがメインです。それに加えて必要があればサポートします。これが本来あるべき1on1であって、決して指示命令するものでも、管理するためのものでもありません。
業務確認や詰め会となってしまっている1on1の<悪しきあるある>はもっての外ですが、一方では「メンバーの話を聞くのだ」と<強制的雑談会>の時間を定期的に要請するのもいかがなものかと思います。
部下たちからすれば、定期的にカチッと日程を決めて上司が「さあ聞くぞ」とやられても、構えてしまうし「別に困ってないし……」となってしまいます。週1回、月1回が部下たちにとってたまらなく苦痛になるのなら、やらないほうがいいですよね。
1on1とは、部下と上司のカジュアルコミュニケーションの場を設けることを通じて、部下が業務上の悩みを解決したり、気付きを得たりしながら、自己成長のきっかけとする場です。形式論に陥らず、「なんのための場か」をブレずに、何よりも、部下たちのための機会、時間であることを第一義に実施することが必須です。御社の1on1が、効果的なものであることを願います。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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