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できる上司が気持ちよく部下に動いてもらうためにやっていること3選ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

「できる」「頼もしい」といわれるリーダーの共通点。その1つは、周りの人が気持ちよく動いていることではないでしょうか。メンバーが快く動ける関係はストレスがなく、組織全体の業績アップにもつながります。そんな、自分も相手も気持ちよくやりとりするための秘訣を、世界のエビデンスにもとづいて紹介する書籍『面倒なお願いでも、相手に気持ちよく届く伝え方は?』から抜粋・再編集して紹介します。

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 これを受け取った相手は、その通りの行動(=早く仕事をすること)を実現しようと動いてくれるはずです。

 人は「自分の仕事ぶりを見てくれている」「評価してくれている」と分かれば、その期待に応えたくなるものです。そしてそのささいな一言で、「この上司のために頑張ろう」と思えます。

 ぜひ、急ぎの用件こそ焦らずに、相手のことを大切に思う一言から始めてみてくだい。

タイミング次第で「NO」も「YES」に変わる

 そして、肝心なのはタイミングです。みなさんは部下に仕事を依頼するとき、重要な案件ほど丁寧に打ち合せをセットしたり長いメールを書いたりしていませんか? でも実は、どんな方法でお願いしても、タイミング次第で相手の反応が大きく変わることが研究で明らかになっています。

 今から50年以上前に、心理学者のハワード・レベンタール博士らがそのタイミングに関する実験を行いました。

 博士らは、イェール大学のキャンパスで、被験者の大学生たちに破傷風のリスクに関する講演を聞かせました。その中で専門家が、「今すぐ学内にある医療センターに行って予防接種を受けるべきだ」と語りました。それを聞いたほとんどの学生は、その場では予防接種を受けに行くと言います。しかし、講演が終わったあと実際に予防接種を受けに行った学生は、たったの3%にすぎませんでした。

 そこで今度は、別の学生たちに同じ講演を聞かせ、講演中に医療センターの場所に印をつけた地図を配りました。さらに、その場で翌週のスケジュールを確認させ、いつ予防接種を受けに行くかを決めるよう求めました。

 すると、9倍以上、28%もの学生が予防接種に行ったのです。「スケジュールや場所を確認する」という予防接種に向けての具体的な作業が、行動のきっかけになったと考えられます。

 このように、先に決めた小さなことがのちの行動に大きな影響を与えることを、心理学では「先行刺激(プライミング)効果」といいます。

 東京都立川市では、この効果を使って「乳がん検診の受診率」を大幅に上げることに成功しました。「乳がんのリスクを理解しているが、検診に行っていない人」に向けて、検診予約のメモなどを書き込む「受診計画カード」を送付したところ、受診率が7.3%から25.5%へと、3倍以上に増えたのです。

 これを部下とのコミュニケーションに応用するなら、何かの話の続きや、事案が発生したタイミングで時間を置かずにすぐ伝えるということを心掛けてみてください。自然な流れで依頼をすれば、相手も身構えずに行動してくれます。面倒だと思われたり、忘れられたりする余地がなくなるのです。

 大事なことだからと形式張って伝えるのではなく、すぐに動いてほしいなら、気持ちが盛り上がっているときに行動の「きっかけ」を作っておくのが効果的といえます。

 このような「気持ちのいい」コミュニケーションの積み重ねが、信頼関係につながります。

 本書ではこの他にも、シチュエーションごとに活用できる伝え方のコツをたくさん紹介していますので、ぜひお手に取ってみてください。

著者プロフィール:川上徹也(かわかみ てつや)

湘南ストーリーブランディング研究所 代表/コピーライター

大学時代、世界の論文との出会いを求めて図書館に通いつめ、狭いアパートを論文でいっぱいにして暮らす。「人の心を動かす」仕事を志し、広告代理店へ入社。営業として働くが、コピーライターを目指すため退職。フリーターをしながら通った広告学校の講師にすすめられて応募した企画で、TCC新人賞を受賞。その後、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC賞などを多数受賞する。現在は、ブランドの魅力を物語にして伝える「ストーリーブランディング」という手法を確立し、企業や団体のマーケティング・アドバイザーとして活動している。『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(角川新書)、『ザ・殺し文句』(新潮新書)など著書多数。


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