第12回:「EQ」が高い人に失敗者なし!人選のプロが調べた、CEO選抜の成功法則:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
ビジネスの特性にはいろいろなものがあるが、「経験」と「EQ」と「IQ」この3つが高いとビジネスの成功率が高いということが分かっている。しかしこれらの組み合わせによる失敗率の比較に面白い結果が見られた。
井上の知見・経験からも、人脈力がある方や人望がある方は、倒れにくいということが言えます。誰しも失敗したり、苦境に直面したりする。その際、人望や人脈力がある人は周りの人が救ってくれる、周りに助けられるのです。だから結果として致命的な失敗にはならず、大変なことはあるのだけれども乗り越えられる。それがEQだと、この調査結果から改めて思います。
組み合わせで見てみたものもあり、こちらも非常に参考になります。
経験とIQという特性を組み合わせても、4人に1人は失敗しています。経験豊富でIQが非常に高くても、4人に1人は失敗しているのです。EQの高いリーダーの重要性、必要性が認識できたのではないでしょうか。
CEO、リーダーに誰を抜てきすべきか?
フェルナンデス・アラオスは、こんなチャレンジをしています。ある企業のCEOを選ぶ際、候補が4人いて、それを4タイプに分けました。
先の調査結果に基づき、ここでCEOに選抜したのはDの「経験はあまりないけれど、圧倒的にEQの高い人」にしました。すると就任後、売上も利益も向上した。
この時にフェルナンデス・アラオスが「想定外だった」と言ったのは、他の候補者3人が全員会社に残ったことです。これは確かに、アメリカではレアケースです。一般的にはCEOの選抜に敗れたら、他の候補者たちは競合企業など他の企業に移籍することが多い。
ところが今回のケースでは、他の候補者3人が「Dがトップになるなら、僕は彼を支援したい」と全員が会社に残ったというのです。
あくまでも推察ではありますが、これぞEQ力の発揮です。Dは人望力、人徳、器量を併せ持つ方だったのではないか。日本語で言う「人間力」が、他の候補者を引き留めたのではないかと考えらえます。
経営者JPでは長らく、本当にしつこいくらい「トップやリーダーに選抜する人は、<できる人>+<できた人>にしましょうね」という話をしています。
「できる人」はIQが高い人。知的に優秀な人材です。「できた人」はEQが高い人。人間力に優れた人材です。この両方を見ましょうと何度も言っていますが、変革していける企業とか、成功する企業は、ちゃんと両方を見ているなと感じます。
今回の学びとしては、経営者選抜・リーダー選抜には、「IQ」「経験」「EQ」の3つを確認するのが良い。IQは地頭・偏差値で確認でき、経験はキャリアからうかがい知れ、EQはEQ検査でチェックできる。この3つをそれぞれアセスメントして明らかにし、その上で選抜検討を行う。
ぜひ読者の皆さんの会社でも、この3つを明らかにした上で、今回のDタイプに該当する候補者を抜てきするのが望ましいと思います。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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