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日本市場では模倣による激しい競争が企業を鍛え、国際競争力を高める源泉となった(2/2 ページ)

マイケル・ポーターは、著書で「日本企業は模倣しあっているだけで、共倒れの戦いから逃れるには戦略を学ばなければならない」と書いている。模倣やコピーキャット、横並びは本当にネガティブな行動でしかないのか。

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(1)企業規模

  • 大規模な企業は小規模な企業よりも模倣されやすく(H1:情報仮説)、同規模の企業は異なる規模の企業よりも模倣されやすい(H2:競争仮説)。
  • 環境の不確実性が高い場合、大規模な企業は小規模な企業よりも模倣されやすく(H1a:情報仮説)、環境の不確実性が低い場合、同規模の企業は異なる規模の企業よりも模倣されやすい(H2a:競争仮説)。

(2)出身産業

  • 関連する専門知識を習得できる産業出身の企業は、他の産業出身の企業よりも模倣されやすく(H3:情報仮説)、同じ出身産業の企業は、異なる出身産業の企業よりも模倣されやすい(H4:競争仮説)。
  • 環境の不確実性が高い場合、関連する専門知識を習得できる産業出身の企業は他の産業出身の企業よりも模倣されやすく(H3a:情報仮説)、環境の不確実性が低い場合、同じ出身産業の企業は、異なる出身産業の企業よりも模倣されやすい(H4a:競争仮説)。

 この仮説に対するモデルは、以下のとおり。


仮説とモデルの検証結果

 仮説を検証した結果を淺羽氏は、次のように語る。「(1)企業規模の仮説では、大企業の新製品は、全ての規模の企業が水平に模倣しますが、対角線に模倣されるという結果は、はっきりとは現れませんでした。一方、(2)出身産業の仮説では、同じ出身産業のバラエティ製品ほど対角線に模倣されやすいという結果になっています」

模倣は競争力の源泉となるが失敗すれば大きなリスクも伴う

 現在、模倣理論の分類は、持株会社やコーポレートガバナンスのタイプ、海外展開、環境戦略、技術適応、技術の普及など、さまざまな研究分野に応用されている。バブル期以前の日本企業の国際競争力を高めてきた要因として、日本は米国に比べ、1つの製品市場に能力が拮抗し、多くの企業が競争していることが挙げられる。その結果、国レベルで技術機会にR&Dリソースが集中的に投入されてきた。

 「日本市場はライバル間で監視して、ライバルが少しでもリードするとすぐに追随し、少しでもいいからリードしようと努力します。この激しい競争が企業を鍛え、国際競争力を高めてきました。一方、模倣は、企業の戦略や技術パスの選択肢を狭めることから、大きなポジティブ、あるいはネガティブの結果に賭けることになります。そのため個々の企業にとってはリスク抑制になりますが、産業や国全体にとっては大きなリスクを負うことになります」(淺羽氏)

 そこで今後のアイデアとして淺羽氏は、「流行やバブルはなぜ起きるのか、さらになぜバブルは弾けるのか、なぜ歴史の中で同じことを繰り返すのかといった研究に模倣理論が生かされるかもしれないと考えています。また、これまでは模倣する側の研究が多かったのですが、今後は模倣される側である市場リーダーの戦略を研究することも必要だと考えています」と話している。

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