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組織を短期間で劇的に改革する方法――自分の内面を見る&会計理解ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

社員達と一緒の景色を見ながら皆でアイディアを出し合いながら業績を上げる方法はないのか? と模索した結果、生まれたのが「風船会計メソッド」。

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 「動いていない固定資産をどう活用し利益を生み出すのか?」「どんな仕事を営業にとってきてもらえば良いか?」全部署で知恵を出し合います。それで立場の分断、部署の分断、経営者と従業員の分断の溝も埋まっていきました。

 皆、豚の貯金箱と風船を眺める事で会社全体を俯瞰する事ができるので意識が変わるのです。例えば、会社から売上目標「1000万円」と言われた時に受け取り方は人それぞれなのです。

 営業担当だったら「会社はまたむちゃな数字を押し付けてきて……」と感じるかもしれないし、製造部の人なら「自分には関係無い」と思うかもしれないし。社長だったら「本当は1200万を望みたいけど、1000万でと妥協しよう」と。

 これが、風船会計で全員が会社全体を俯瞰していたら「なぜ、1000万必要なのか?」という事がBS、PLから理解できるのです。

 人はブラックボックスになっていると怖いのです。決算書が理解できないという事は会社がブラックボックスのようです。何の車に乗っていて、何人乗せる事ができるのか? どこを走っているのか? 今は攻めていいのか? どこで休憩すれば良いのか? など分からないからとにかく不安なのです。

 当社はコロナ禍で業績が3年近く落ちました。売上が20%近く落ちて赤字の時期が続いたのです。その時に風船会計メソッドを使って社員達と毎週話し合っていました。大きく落ちた売上でしたが、あがいても不景気で売上を増やす事ができなかったのです。では、どうやって資金を捻出するか? 売上債権のサイト日数が長かったので、それを短縮する為に営業部がお客さまと交渉を始めました。すると、8億円もあった売上債権が5億円に減ってくれたのです。解消された3億は現金になったので新たに借入をしなくて済みました。

 もし、風船会計が無かったら私はBSを深く理解はしていなかったので新たに借入をしていたでしょう(ゼロゼロ融資もあったので)。そうすると、ゼロゼロ融資の返済が始まった今頃相当苦労していたと思います。

 私はセミナーや他社の企業研修でこれまでに600人以上の経営者、会社員、主婦、学生、子ども達に風船会計を教えてきました。2時間半のセミナーで全く会計に携わっていなかった人も会計に詳しい人も「目からうろこだ!すごい!」と驚きと喜びを感じてもらえます。書籍を読んだ反響もたくさんありました。人には限りないチカラがあり、ちょっと違う角度から教える事でそのチカラが開花します。

 経営者やリーダーだけが頑張るのではなく、会計を理解しておく事でどんな立場の人でも考える力が付き、アイディアを出せます。また、そのアイディアは会計が裏付けされているから聞き入れてもらえ、それが自信につながり必然的に幸せに結び付きます。「自分は歯車ではない」という事を体感できるのです。このように風船会計は劇的に組織を変容できる効果があります。

 大人だけでなく子ども達にも風船会計を教えています。いつか義務教育に入れたいと考えています。子どものうちから 決算書を読め、俯瞰力を付け、組織で国籍、性別、部署、経歴という溝を消せる力を。自分の内面を見る事と会計理解で組織は変容します。

1983年生まれ。2005年に北九州工業高等専門学校を卒業し、ラムリサーチ株式会社(旧ノベラスシステムズジャパン)へ入社。2009年に同社を退職、2010年にスイスのIMI International Management Institute Switzerland へ留学しMBA を取得した。2011年に帰国しマンダリン・オリエンタル東京に入社、2012年に同社を退職し結婚。3年間の専業主婦生活のなかで簿記2級を取得した。2015年に松本興産へ入社、取締役(総務・経理管掌)就任。

いかにも製造業・男社会だった同社を女性ならではの力で柔らかく改革し、2022年にはForbes JAPAN WOMEN AWARD、日本中小企業大賞 働き方改革賞 優秀賞を受賞。2023年には埼玉グローバル賞を受賞し、埼玉県親善大使に拝命される。また、同年に自身で考案した「風船会計メソッド」特許取得、情報経営イノベーション専門職大学の客員教授拝命。現在までの参加者は600人以上に上り、「全く決算書を見たことがない高校生や数字アレルギーの経営者にもたった2時間で理解できる」と話題に。定員50人の枠が1日足らずで満席、新規の参加は3カ月待ちになるなど、注目を集めている。


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