メンタル不調には薬より〇〇? うつになった精神科医がやったこと:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
誰もが「心の苦しさ」を抱えているといってもいい今の時代。その大きな原因となるのは、人間関係からくるストレス。人間関係そのものを変えるのは難しいが、解決の糸口は「食事」にある。
まず、「体に負担をかけない食事」にすると体が楽になります。メンタル不調になると、何をやるのも億劫になりがちですが、体が楽になると、ちょっとした動きや考えたりすることが面倒でなくなります。
次に「腸内環境を整える」と、腸と関連性が深い脳の動きがよくなります。心と体がスムーズに動かなくなるのは、ストレスによって脳の動きが悪くなるからです。その原因は、脳の活動を支える神経伝達物質が不足するからだといわれています。腸内環境がよくなると脳内の神経伝達物質の分泌がよくなり、脳の活動が活発になります。
そして、「脳に栄養を補給」することも必要です。私たちの脳は、ストレスを受けると脳の活動に必要な栄養素も不足しがちになるからです。
この3つのポイントを実践するのが宮島式食事法です。
朝食は果物だけがいい理由
では、具体的に何を食べればいいのか。私が実践したことの1つは、「朝は果物だけ食べる」でした。
毎朝、果実を3〜4種類用意して、ほかの食べ物は食べないことにしたのです。用意する果実の種類や量は適当で、たくさん食べることもあれば、バナナだけという日もありました。
朝食をなぜ果物だけにするとよいのかというと、人間の生理サイクルを考えたとき、午前中にしっかり便を出すことは、とても重要なことだからです。体は朝目覚めると、まず便や尿、体の老廃物といった「毒素」を体外へ出そうとします。
例えば、朝起きると痰を出したくなります。これも一種の毒素の排出行為であり、体は、こうした排出、排泄行為を通じて自律神経の切り替え(リラックスの副交感神経から活動系の交感神経への切り替え)をスムーズに行おうとします。
朝、スッキリ排便できると気持ちもスッキリ。1日をアクティブに過ごそう、仕事も頑張ろう、そんな気持ちが自然とわきあがってくるのは、排便によって自律神経の切り替えがうまく行われた証拠ともいえます。
逆に排便を含め毒素の排出がうまくいかないと、交感神経への切り替えができず、そのため、何となく調子が出ない、体が重い、気分が乗らない、そんなモヤモヤを引きずりがちです。ですから、朝は腸の排便運動を妨げない食品をとることがポイントになります。
その点、果物は理想的な食べ物です。
なぜなら、果物には、酵素が豊富なため、消化に負担をかけず(消化を助けるといってもいいでしょう)、その結果、腸の排便リズム、排便機能が邪魔されないのです。体の自然な生理サイクルを狂わすことがありません。
さらに、栄養学的にいえば、果物には脳の栄養となる糖分(果糖)が含まれているため、意識が目覚めてきます。また、ビタミンやミネラルも含まれているため、体をシャキッと目覚めさせるのにも最適です。
自分のうつが治り、この食事法の恩恵を直に感じた私は、徐々に患者さんたちにも提案するようになりました。また、SNSでも紹介しました。すると、さまざまな人が試してくれて、この食事法を実践する人の輪が広がっていきました。
上司のパワハラをきっかけに、うつになってしまった女性や「新型うつ」だった男性、「摂食障害」と診断された女性とその家族など、たくさんの人が宮島式食事法を採用してくれて、つらい症状が軽くなっていきました。
まずは2週間、1週間からでもかまいません。朝食を果物に変えてみてはどうでしょうか。少しずつ心が変わっていくことを実感できるはずです。
著者プロフィール:宮島賢也
精神科医・産業医
1973年、神奈川県生まれ。防衛医科大学校卒業。研修中、意欲がわかず精神科を受診、うつ病の診断を受ける。自身が7年間抗うつ剤を服用した経験から、「薬でうつは治らない」と気づき、食生活と考え方、生き方を変え、うつ病を克服する。その経験を踏まえ、患者が自ら悩みに気づき、それを解決する手伝いをする方向へと転換。うつの予防と改善へ導き、人間関係を楽にする「メンタルセラピー」を考案する。心の深い世界を知ったことから、さらに探求を開始し、現在は産業医などをしながら、心の不調の予防や教育により一層関われる方法を模索中。
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