検索
連載

アラフィフ世代が感じるさみしさと孤独感の正体ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

40代から50歳前後の年代は、能力、体力的に、人生の大きな分岐点。これからは、これまで蓄積した知のリソースを活かして人生を生きていくことが求められる。

Share
Tweet
LINE
Hatena
前のページへ |       

「失われていくもの」に抗う50代の孤独感

 特に大きな疾患があるというわけではなくても、倦怠感、不眠、頭痛といった症状が、40代後半から現れることがあります。更年期症状と称され、かつては女性特有のものとみられていたこれらの症状は、男性にもみられることが現代では知られるようになりました。

 また、生活習慣が原因となる心筋梗塞や脳卒中は、50代は40代のおよそ2.5倍(厚生労働省「平成29年患者調査」)にもなります。

 筋力も50代から急激に低下しはじめ、五十肩、腰痛など、筋力低下に伴う症状が顕著になってきます。加齢に伴い、40代が「心身の衰えを感じはじめる時期」なら、50代は、「心身が急激に衰える時期」といえます。ですから50代は、老いや病気について真剣に考えることを求められる世代でもあります。

 「ああ、もう本当に若くはないのだ」と思い知らされ、「若さ」をはじめ、以前はあたりまえのように持っていたものが失われるさみしさを抱えていくのが50代といえるでしょう。

 会社では、同世代のなかでもポジションが確定していきます。それを変えることは、この年代になってくると難しいというのが現在の社会状況でしょう。あとは静かに定年を迎えるか、最後にひと花咲かせるかの選択を迫られる世代でもあります。こういうときに、うまく立ち回っている同僚や成功している学生時代の友だちを見てうらやましくなったり、ときにはねたましさを感じたりすることもあるかもしれません。

 そのような自身のネガティブ感情を目の当たりにすると、それがまたさみしさを助長するという負のスパイラルにも陥ってしまいかねません。無謀な脱サラをしてみたり、人によってはギャンブルに依存するようになったり、異性に溺れたりしてしまうという場合もあるでしょう。

 現代における50代は、若者ともいえず、高齢者というにはまだ早く、そのちょうどあいだに位置しているような、いわば中途半端な年代でもあります。若者ほど元気で未来があるわけではなく、高齢者ほど丸くなってもおらず、諦観しきっているというわけでもない。「最後にもうひと頑張りできるかもしれない!」そんなことを思って、焦りを感じる人も少なくないでしょう。

 子どもがいる人は、子育ても一段落するタイミングであることが多いでしょう。子どもたちが独立して実家を離れていくときは、嬉しいながらもやはりさみしいもの。子離れしているつもりでも、もの悲しさを感じるでしょう。これは、「空の巣症候群」という名で知られる現象です。子どもが自立していく機会に、養育者は自身の役割の喪失を感じて、さみしさがつのり、心身の不調として現れることがしばしばあるのです。子どもの進学、就職、結婚などを契機に起こることが多いようです。

 また、50代になると、身近な人々との死出の別れに直面することも増えていきます。特に同世代の友だちや知人との死別は、現代の日本人の平均寿命からすれば、あまりに早過ぎるものです。特に強い心の痛みを伴ったさみしさを感じることにもなるでしょう。

 更年期の「更」という字には、「あらたまる」「かわる」という意味があります。

 50代は、心身ともにちょうど移行期に差し掛かり、その変化に自身の認識が追い付かず、悩ましさを感じる年頃といえます。

著者プロフィール:中野信子(なかの のぶこ)

1975年、東京都生まれ。脳科学者、医学博士、認知科学者。東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。フランス国立研究所に博士研究員として勤務後、帰国。脳や心理学をテーマに研究や執筆の活動を精力的に行う。現在、東日本国際大学教授。著書に『人は、なぜ他人を許せないのか?』『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(アスコム)、『サイコパス』(文藝春秋)、『脳の闇』(新潮社)、『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(日経BP)など多数。


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページへ |       
ページトップに戻る