ビジネスプロセスマネジメントのこれまでとこれから:ビジネスとITを繋ぐビジネスアナリシスを知ろう!(1/2 ページ)
ビジネスプロセスマネジメント自体は決して新しい考え方ではないが、近年の企業経営を取り巻く変化の中で、また新たな役割を与えられるようになっている。
第2回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(前編)
第3回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(後編)
第7回:戦略と実行の橋渡し、ビジネスアーキテクチャの役割――デジタル時代を生き抜く、企業の新しい羅針盤
第8回:要件定義をツールで行なう:ビジネスアナリシスツールの紹介
第11回:日本で生まれたビジネスアナリシス方法論:GUTSY-4
第13回:DX推進・DX人材育成手段としてのビジネスアナリシス実践例
第14回:重要な経営課題を デジタルで解決するために――ビジネスアナリスト(BA)ならデジタルを活用した解決案を提案できる
第15回:ビジネスアナリシスは誰もが使える思考と行動の基盤――ビジネスアナリシスの原点は日常生活の中にある
ビジネスアナリシスのノウハウ集であるBABOKv3では、ビジネスアナリシスにおいても持つべき視点の一つ(専門視点)としてビジネスプロセスマネジメントが紹介されています。
ビジネスプロセスマネジメント自体は決して新しい考え方ではありませんが、近年の企業経営を取り巻く変化の中で、また新たな役割を与えられるようになっています。そんなビジネスプロセスマネジメントの“これまで”と “これから”を考えてみましょう。
ビジネスプロセスマネジメントの“これまで”
ビジネスプロセスはいくつもの業務の集合体です。それぞれの業務はインプットとなるモノや情報を加工して、より価値のあるモノや情報をアウトプットとして後工程に送り出します。
後に続く業務がこれを繰り返すことで、最終的にはお客様に製品やサービスが届きます。この業務が連携し、価値を届ける構造を「ビジネスプロセス」と呼びます。そして、このビジネスプロセスの構造を管理し、常に最適なプロセスを目指して変革し続けていく活動を総称して「ビジネスプロセスマネジメント」と呼びます。
このビジネスプロセスマネジメントの起源は20世紀初頭にまでさかのぼります。アメリカの技術者フレデリック・テイラーは鉄鉱会社で多くの労働者がシャベルで鉱石や灰をすくう作業をしているのを見て、労働者の体格別に、どの大きさのシャベルをどのように扱えば最も効率的に作業できるのかを算出しました。
その成果は素晴らしいもので、一人当たりの作業量は3.7倍に増え、単位生産量あたりのコストは56%も削減されました。そして、会社だけでなく労働者も賃金が63%上がるという恩恵を受けました。
これに代表される数々の研究から、テイラーは科学的な経営管理の父とよばれています。この「仕事の工程を明らかにし、改善していく」という考え方は、現代のビジネスプロセスマネジメントの考え方にそのままつながります。
時を経て、現在の「ビジネスプロセスマネジメント」という領域が確立される過程には、大きく2つの流れが関係しています。1つは1980年代に盛んになった製造業の品質向上活動です。“
カイゼン”に代表される日本の製造業の品質管理や効率改善の手法は、米国に渡りTQMやシックスシグマなどと呼ばれる手法として体系化されました。この「さまざまな業務可視化手法を駆使し、関係する人や組織が協力して、改善サイクルを回し続ける」という考え方がビジネスプロセスマネジメントに受け継がれます。
もう1つの流れが組織の構造を「顧客に価値を提供する業務の流れ(=プロセス)」と言う視点から捉えるプロセス志向の考え方です。プロセス志向を一つのブームにしたのが、マイケル・ハマー氏が1993年に提唱したビジネスプロセスリエンジニアリング(BPR)という手法です。
BPRは「販売」「生産」「経理」といった機能を横断した業務や情報の流れを再整理して、劇的な業務変革を狙います。このような研究成果が融合して2000年前後に確立されたのが現在のビジネスプロセスマネジメントです。
これまで、企業がビジネスプロセスマネジメントに取り組む主な動機は、現場の業務品質を維持し、改良することでした。業務が説明可能な状態になっていなければ、社員を育成したり、トラブル時に速やかに原因究明をしたりすることは困難になります。
もちろん、業務改善を進め品質と効率を高めることもできません。各業務の担当が自らの業務をしっかり理解して、説明可能な状態にしておくことは強い現場(=現場力)の基本です。
加えて今、ビジネスプロセスマネジメントは新たにとても大切な役割が与えられるようになりました。これが「企業が変化に柔軟に適応する」ための基盤となることです。
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