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東京、10月に行くべき無料のアート展3選タイムアウト東京のオススメ

東京の街の“ローカルエキスパート”が、仕事の合間に一息つけるスポットやイベントを紹介します。

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 2025年10月、街はアートでより自由に開かれます。「エスパス ルイ・ヴィトン東京」ではアンディ・ウォーホルの個展、「シャネル ネクサス ホール」ではAIアートとエコロジーが交わる展示、「21_21 DESIGN SIGHT」では「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」による照明の展示などが入場無料で楽しめます。リスト片手に街を歩けば、日常の景色がアートに変わるでしょう。


(c)The Andy Warhol Foundation for the Visual Arts, Inc. Licensed by Adagp, Paris 2025Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo credits Jeremie Souteyrat Louis Vuitton

 「エスパス ルイ ヴィトン東京」で、ポップアートの旗手であるアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)の個展「ANDY WARHOL SERIAL PORTRAITS」が開催されています。期間は2026年2月15日まで。初期の私的スケッチから、亡くなる前年に乱れ髪のかつらを被って証明写真機で撮った写真、さらに1980年代の集大成『Ten Portraits of Jews of the Twentieth Century』まで、自己像を巡る一貫した探求の軌跡を紹介しています。

 ウィッグとサングラスで謎めいた人物像を築き、そのイメージを巧みに活用して作品の人気を高めたウォーホルは、変装と自己演出の達人でもありました。写真やセルフポートレートでは多様なキャラクターを演じ、女装姿のポラロイドや数々の「Self-Portraits」は、外見を自在に操る彼の手腕を示すと同時に、アイデンティティーやイメージの意味を問いかけています。

 証明写真機による『Self-Portrait』から謎めいた『The Shadow』まで、本展ではメディアにおけるウォーホル像の変遷と、技法や様式の発展をたどります。1950年代のボールペンによる若い男性のドローイングなど、めったに公開されない作品も並び、広告イラスト時代に培われた独自のスタイルを垣間見ることができるでしょう。


(c)ISSEY MIYAKE INC.

 次に紹介するのは、「21_21 DESIGN SIGHT」で開催中の「TYPE-XIII Atelier Oi project by A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」です。期間は11月24日まで。スイスを拠点とするデザインスタジオ「atelier oi」と、服作りを超えて素材や技術の可能性を探求してきたブランド「A-POC ABLE ISSEY MIYAKE」が協業し、「一枚の布」と「一本のワイヤー」を融合させた新しい照明器具を生み出しました。

 会場では、2025年4月の「ミラノデザインウィーク」で発表され、大きな反響を呼んだプロトタイプを中心に再構成した内容を日本で初披露。両者が重視する「ものづくりのプロセス」を軸に、視点や技術を交差させながら絶え間なくアイデアを交換することで実現した照明シリーズ「O Series」と「A Series」を展示します。

 衣服の枠を超え、布の可能性を照明デザインへと拡張した、A-POC ABLE ISSEY MIYAKEならではの美しさと機能性を体感してください。


《Artificial Natural History》 , 2020-2025 (c) Sofia Crespo

 AIアートとエコロジーが融合する展覧会「Synthetic Natures もつれあう世界:AIと生命の現在地 ソフィア クレスポ / エンタングルド アザーズ」も見逃せません。「シャネル ネクサス ホール」で12月7日まで開催。今世界のアートとテクノロジーが交差する臨界点で、リスボンを拠点に活動するアーティストのソフィア・クレスポ(Sofia Crespo)と、彼女がアーティストデュオとして活動するエンタングルド・アザーズ(Entangled Others)による最先端の作品を紹介します。

 クレスポは、AIと生命科学の融合において独自の詩学を築きました。ニューラルネットワークを通して生成されたイメージは、虫の翅(はね)や植物の胞子、深海のクラゲのような形をしながら、どこか既視感を抱かせるが、決して見たことのないものたち。これらのフォルムは、AIが人間の観察力を模倣し、進化的な創造行為に踏み込む過程を可視化しています。

 エンタングルド・アザーズは、「もつれ合い」の概念を軸に、人間と非人間の関係をデータと想像力で再構築。深海や植物、非線形のデジタル生態系などの複雑な振る舞いを、ビジュアルによる「シミュレーション」として提示します。

 本展では、海中2000メートル以深の世界を探る『liquid strata: argomorphs(流動する海洋層:変態するアルゴフロート)』や、「存在しなかった自然史の本」をコンセプトにした『Artificial Natural History(人工自然史)』などの5シリーズを紹介。

 彼らの作品で生成されるイメージは自然の代替ではなく、「人間が自然をどう見たいと願っているか」の深層を写し出しています。絡まり、共鳴し、変容していくそれらのイメージは、現実世界の見え方を静かに揺さぶるでしょう。

 「東京、10月に行くべき無料のアート展14選」では、さらにアート展示を紹介しています。是非チェックしてみてください。

著者プロフィール:タイムアウト東京 編集部

タイムアウトは、1968年にロンドンで創刊され、現在は世界333都市59カ国、14言語で展開する国際的なシティガイドです。東京版「タイムアウト東京」は、日本のヒト・モノ・コトを独自の視点で取り上げ、日英バイリンガルで世界に魅力を発信。高いブランド力とグローバルネットワークを背景に、雑誌やウェブ、ガイドマップを展開。恵比寿には「タイムアウトカフェ&ダイナー」もオープンしています。


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