AIファースト時代に求められるのは地域に根差した人材育成とエコシステムの構築:SENDAI IBM DAY 2026(2/2 ページ)
AIの活用や最先端技術の実装を積極的に進める「AI-Ready 都市・仙台」の実現に取り組んでいる仙台市では、AIネイティブな人材育成と産官学によるエコシステムの構築が喫緊の課題。
AIファースト時代に不可欠なのがAIネイティブ人材
現在、仙台市では、DX推進計画に基づき、生成AIなど先端的なデジタル技術を活用する取り組みを展開している。人手不足の解消や業務効率化、市民サービスの向上など、行政と地域が抱える課題の解決を目指している。また2018年度よりAIなどの先端IT技術とさまざまな産業とを掛け合わせる「仙台X-TECH(クロステック)イノベーションプロジェクト」も展開している。
X-TECHでは、新たなビジネスの創出や高度IT人材の育成等によりイノベーションを創出し、仙台や東北で暮らす人々が豊かさを実感できる未来を目指している。プログラムの参加者は延べ3,000人、参加企業は500社を超え、すでに事業化につながった事例もある。
「事例としては、東北大学発のスタートアップが、カメラで撮影した映像を分析し、リンゴを収穫している人の動きに合わせて追従する機能や、最適経路を判断するAI搭載の『農業用運搬ロボット』を開発しています。またAI画像解析によりレタスの重量を計測し、温度や日照量など環境データと合わせ、レタスの生育状況を予測、そして生育環境を調整し、需要に合わせ適時適切に出荷することができる『AIによるレタスの最適成長予測の自動化』のシステムも開発中です」(髙橋氏)
また東北大学では、学生の実践力、俯瞰力を養うことを目的とした修士課程から博士課程まで5年間の一貫教育プログラム「人工知能エレクトロニクス卓越大学院プログラム(AIE)」を2019年に立ち上げている。AIEでは、博士後期課程に進学する学生を対象に、卓越リーダーセミナーやPBL(Project Based Learning)、企業共同研究インターンシップなど、AI関連のエレクトロニクスにつながる基礎を学ぶことができる授業を、企業の研究者と大学の教員が一体となって作っている。
黒田氏は、「東北経済産業局の支援により、東北地方の半導体関連企業と東北地域の大学が連携した枠組みである東北半導体・エレクトロニクスデザインコンソーシアム(T-Seeds)もあり、産学交流会を定期的に開催しさらなる拡大を推進しています。また、東北大学では、2024年より半導体テクノロジー共創体の人材育成部門として『半導体クリエイティビティハブ(S-Hub)』を運用し、宮城県とも連携しています。S-Hubは学生の教育だけでなく、企業担当者のリスキリングなど、自由な時間で新しい学びや実習が可能な場を提供します」と話している。
優秀な人材を地元につなぎとめる取り組みを産官学で推進
人材の育成・流出防止に向けて、仙台市では、若手起業家の育成・支援プログラム「SENDAI Global Startup Base」を実施しており、AIを活用するビジネスプランも数多く生まれている。若い人材の流出は、仙台市も重大な課題だと認識しており、若い世代が魅力を感じる企業に、仙台の優位性をアピールし誘致を進めるとともに、地元企業の魅力向上に向けた支援にも取り組んでいる。
また2025年度より、地元企業のヒントになるモデルケース作りに取り組んでいる。髙橋氏は、「例えば『先端テクノロジー・データ利活用ユースケース創出支援事業』により、AIや量子コンピューティングなどの先端デジタル領域を活用した新たな製品、ビジネスを創出するための企業を募集し、採択された企業に実証実験のための費用を支援したり、調整したりすることで事例を作っていきます。『AIによるレタスの最適成長予測の自動化』の事例は、まさにこの取り組みの1つです。今後も産官学連携により地域の活性化に取り組んでいきます」と語る。
「人材の流出は東北大学だけでなく、地域全体が抱える大きな課題です。仙台市が進める『AI-Ready 都市・仙台』も、重要なのは“人が中心である”ということです。東北大学では、2026年4月より博士学生に対して年額127万円の研究奨励費を支援すること、さらに日本人の博士学生等に対しては、入学金、授業料を全額免除にすることも決定しています。また大学への入り口として、2027年4月より『ゲートウェイカレッジ』を創設します」(黒田氏)
ゲートウェイカレッジは、学士課程における特別教育プログラムで、入学時には専門分野(学部)を決めず、2年間幅広く学んだうえで、3年次以降に専門分野(学部)に所属する。黒田氏は、「こうした取り組みを加速させるためには、ツールとしてのAIの活用も重要になると思っています。こうした取り組みにより、より高度なIT人材を育成、地域の皆様とともに東北地域を盛り上げていきます」と話す。
福田氏は、「日本IBMでは、社内で、国内でという共創が多かったのですが、AIファーストではエコシステムをいかに構築するかが重要です。その一環として、多くの企業と共創して量子コンピュータを開発しています。東北地域には、国際卓越研究大学やNanoTerasuのような、世界的にもユニークな取り組みがあり、こうした強みを生かして人材を集めることが有効なのではないでしょうか。このとき1+1が2になるのではなく、3にも、4にもなる横のつながりが重要です。そのための取り組みにも協力していきたいと考えています」と話している。
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