経営視点のセキュリティ管理
「適切な内部統制」とは? 経営判断の限界を判断(1/2 ページ)
情報セキュリティ対策を、ひろく企業一般に義務づけた最初の法律は、個人情報保護法であった。個人情報保護法の施行後のプライバシーマークやISMS認証の取得の伸びや、個人情報保護について「過剰反応」の取り扱いが国家的課題とされている現状は、その影響の大きさを物語っている。
では、情報セキュリティ監査についてはどうか。今のところ情報セキュリティ監査を法律上の義務として明文で定める法律は定められていない。しかし、会社法の内部統制を構築、運用するにあたっては、情報セキュリティ監査は、きわめて有効な手段となる。
平成12年9月20日の大和銀行代表訴訟事件判決以来、リスク管理を内容とする内部統制の構築は、取締役の善管注意義務の内容として広く認識され、さらに、今回の会社法は、従来の監査役機能の強化による牽制型のコンプライアンス体制の強化に加え、それまで委員会設置の大会社にのみ求められていた内部統制の構築を、広く大会社一般の全取締役に義務づけた。
内部統制とは何かの経営判断
その結果、およそ取締役は、善管義務の内容として適切な内部統制の構築の義務を負い、さらに大会社の取締役は、会社法・会社法施行規則による内部統制の構築の義務を負う。
しかし、この「適切な内部統制」とは何かについては、会社法施行規則98条以上に具体的な指針は示されておらず、取締役の広い経営裁量に委ねられる。上記大和銀行事件判決も「どのような内容のリスク管理体制を整備すべきかは経営判断の問題であり、会社経営の専門家である取締役に、広い裁量が与えられていると解される」としている。
この点は、金融商品取引法の財務報告に関する内部統制の枠組みとして、金融庁企業会計審議会内部統制部会の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」が、一般的に公正妥当と認められる枠組みとして示されているのとは対照的である。
そこで、取締役会を構成する取締役や実際に内部統制の構築の任にあたる代表取締役は、自らのリスクで適切な内部統制とは何かの経営判断を求められる。
会社法と同施行規則が求める、取締役の職務の執行に係る情報の保存および管理、損失の危険の管理、取締役の職務の執行の効率性確保、取締役や使用人のコンプライアンスを確保するに足る適切な体制の構築には、適切な情報セキュリティの確保は不可欠である。
また、これらの規定を待つまでもなく、情報は、人、金、物、時間と並ぶ重要な企業のリソースであるから、およそ会社の取締役は、その善管義務を尽くすために、適切な情報セキュリティを確保する体制とは何かという経営判断を求められることになる。
「合理的な手続に従い誠実に」をどう判断するか
ところで、筑波大学の弥永真生教授によれば、経営判断事項については、「その経営判断が結果として会社あるいは第三者に損害を生じさせたとしても、業務執行が合理的な手続に従い、誠実に行われた場合には、事後的な判断によって、取締役に注意義務違反があったとして責任を問うべきではない」とされる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
JR東、磁気乗車券を2027年春に廃止 小型券はQR付き大型券へ、環境負荷軽減
-
2
富士通、新方式の量子コンピューター試作機を世界初開発 ダイヤモンドで計算精度を向上
-
3
AI画像認識で検査効率化、技能継承やロボ自律制御にも活用へ 東芝総合研究所の落合誠所長
-
4
「AI社員」活用、NECは無人部署 DeNAには17体、南場社長「けなげ」と太鼓判
-
5
「ビール化」するサントリー「金麦」、救世主になれるか 10月6日発売 関西で販売強化
-
6
顧客価値創出へのAIの貢献
-
7
「身代金は支払うべきか」――YKK APが7年越しに気付いた経営とセキュリティの視点のギャップ
-
8
鷹は、自らの爪・羽根・くちばしを折ることで、生まれ変わる
-
9
マイケル・ジャクソンはなぜ白い靴下を履いたのか?
-
10
第53回:なぜ、日本企業では「考えるマネジャー」が育たないのか──AI時代、「言われたことは得意だが、課題抽出や提案は苦手」な組織から脱する方法
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー