世界で勝つ 強い日本企業のつくり方
「地方へ販路を拡大し国産ブランドからシェアを奪う」――ソニーチャイナ・永田社長(2/3 ページ)
地方都市の販売ネットワークを
ITmedia 少子化などによって日本経済が縮小に向かう中、中国をはじめ新興国の内需に日本企業の期待が集まっています。実際に中国でビジネスをされている立場からどのようにお考えでしょうか。
永田 中国でもほかの新興国でも同じだと思いますが、消費者の生活水準が高まり購買力が向上したという点でマーケットに魅力があります。ビジネス機会の広がりに伴い、競争が激しくなってきています。中国の家電業界は製品カテゴリーごとに様相が異なります。デジタルカメラの領域には中国の国産ブランドはあまり参入しておらず、ソニーやキヤノン、Samsungといった外資企業が競い合っています。
一方、テレビに関しては中国の国産ブランドが10社以上存在しており、マーケット全体の売り上げの7割近くを占めています。残りの3割の中にソニー、シャープ、サムスンなどがひしめき合っているのです。
デジタルカメラの場合、例えばソニーとキヤノンが競争しようと両社の経営環境や経営への制約はほぼ同じ条件です。ところが、競争相手が国産ブランドのテレビの場合、開発費の掛け方やパネルの調達方法など難しい競争の論理が働きます。国産ブランドに対する中国政府の支援や期待は強く、成長を助けるような政策を出してくるため、競争は一層厳しくなります。
中国は国土が広く人口が多いため、いかに販売ネットワークを構築するかが鍵を握ります。既にブラウン管テレビの時代から国産ブランドは、サービスステーションや倉庫、生産工場を小さいものも含めて数カ所持っています。かたや外資ブランドは、購買力のある大都市の販売ネットワークをまず整備するため、地方の第2、第3都市への展開は遅れていました。決定的な差があるとすれば、外資ブランドはそのネットワークづくりをしている最中で、国産ブランドはほぼ完了している点です。
中国では内需拡大に向けて農村での家電製品の普及を促進する「家電下郷」という政策がとられています。企業がこの政策に参加するには売値の制限があったり、サービスステーションが村の近くにあったりとさまざまな基準をクリアしなければなりません。いわば国産ブランドに有利となる枠組みと言えます。
ソニーも地方へ打って出なければなりません。米国と同じく中国でも地方のスーパーマーケットに家電売り場があります。今までは国産ブランドしか置いていませんでしたが、そうしたチャネルにも入り込めるよう販路を広げていく必要があります。
ITmedia 日本企業が流通構造に入っていくには障壁が高いということでしょうか。
永田 国産ブランドがあまり成長していないカテゴリーについては問題ありません。ただし携帯電話市場は特殊です。Sony Ericsson、Nokia、Samsung、Motorola、LGなど外資企業ばかりで占められていますが、政府の要求が厳しく中国の独自規格を採用しなければなりません。他国で販売しているものをそのまま持ち込むことはできないため、商品の開発コストなど莫大な投資が必要になります。中国モデルを作るのであれば、それに見合ったリターンがないと投資効果は極めて悪いです。スケールメリットがなければ生き残るのが難しい市場でしょう。
ソニーに関して言うと、テレビの固定費の改善や新しい商品サイクルをいかに生み出すかという点に注力しているので、あたかも拡大戦略をとっていないように見えますが、長期的な戦略としては数多く商品を売ることには変わりありません。単に価格競争に走るのではなく、マーケットでの自分たちの地位を上げる努力をしていかないと、競争力を獲得できないのが今日の中国市場だと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「現実にCtrl+Zはない」──フィジカルAI時代に企業が備えるべき新役務「AIスチュワード」とは
-
2
初心者向けの料理教室、男性受講生が過半数に 家庭での調理頻度も増加
-
3
5年で辞める予定の元数学青年が「しなやかな心とぶれない軸」でCISOへ - 富士通 太田氏
-
4
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
5
「仕方ないインシデント」まで全力を尽くせるか - さくらインターネット 江草氏
-
6
「ウサギとカメ」の本当の教訓とは?――童話の教えを疑ってかかってみると、人生の本質が見えてくる
-
7
「漏洩連絡が来た…」自分の個人情報が流出したら? 二次被害を防ぐ、対処法と日頃の備え
-
8
「昆虫サイボーグ」で災害現地の行方不明者ゼロに挑む
-
9
「薬機法申請の添削AI」を現場が作った――ライオンが100人のAI開発者を育てて見えた「民主化」の分岐点
-
10
「技術を知らなければ、適切なリスクは取れない」 マネーフォワードCISO 松久氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー