Gartner Column
IT戦略の策定方法について極める(後編)――CIO/ITエグゼクティブの成功とは何か?(1/2 ページ)
今回は、IT戦略の3本柱のうち「コントロールの視点」について述べたいと思います。日本企業のIT戦略とかIT中期計画の相談を受ける中、この視点について、計画的に実行している企業が極めて少ないことが経験的に分かっています。しかし、ITの価値を組織内で認識してもらうためには、この視点は、最も重要となります。
読者の質問から
前回のコラムを掲載した後に、読者から以下のような質問がありました。「ITによる貢献というが、機械化による合理化、省力化以外に何か貢献できるファクターがあるのか?」というものです。
何と素晴らしい質問でしょうか。恐らく、ほとんどの読者が、このことに疑問を持ったはずです。もっと極端に言えば「合理化・省力化によるコスト削減以外に、どんな訴求ができるというのか?」といういら立ちにも似た声が聞こえてくる気がします。
では、次のようなことを考えてみましょう。図1を見てください。単純に「As Is」と「To Be」とが、示されているだけですが、「As Is」と「To Be」の間には、明らかなギャップが存在します。
企業のビジネス戦略を当てはめれば、将来の「To Be」の位置には、現状では達成できない目標があるはずなのです。では、どのようにすれば、「To Be」の目標に到達できるでしょうか。この「どのようにすれば」の部分がギャップとして存在するということなのです。
ビジネスにおいて、このギャップとは何でしょうか? そして、ITがこのギャップに貢献できるとすれば何でしょうか? 優秀な営業パーソンの代わりになるコンピュータ・システムでしょうか? 流行のモビリティ(スマホやタブレットなど)による顧客へのプレゼンテーション力強化施策でしょうか? 具体的には、いくつものアイディアが浮かびますが、これらのアイディアをどのように表現すれば良いでしょうか?
ガートナーでは、「ケーパビリティに着目」するようにアドバイスします。つまり、「As Is」と「To Be」の間には、明らかな「ケーパビリティのギャップ」が存在するわけです。営業員が、顧客との接触機会を「今よりも」増やすためのケーパビリティだったり、「他社よりも」タイミング良く製品やサービスを顧客にデリバリするケーパビリティだったりというものが、このギャップとして存在するはずです。
このケーパビリティを獲得するためにITはどのように貢献するのか? というのが、IT貢献そのものなのです。営業員が顧客との接触機会を「今よりも」増やすために、(1)営業員の行動分析をし(2)IT化により、顧客と接触していない時間を削減する(3)顧客とアポイントを効率的に取るための(ITを含めた)仕組みを提供、するようなことが、IT貢献です。労働集約型のコスト削減だけがIT貢献ではないことが、理解できると思います。
なぜ「コントロールの視点」が大事なのか?
「コントロールの視点」には、「IT基本原則」、「ITガバナンス」、「IT財務管理」、「評価指標」があることを前回のコラムで説明しました。さてこれらは、IT及び、企業/経営にどのような影響を与えるのでしょうか?
(1)「ITの仕事は、できて当然、できなければバッテン(×)」
(2)「ITは、コスト削減ばかりが要求される」
(3)「IT部門だけでは、投資優先順位をつけられない」
(4)「“IT部門は、勝手な判断をしていて、ユーザーの希望を取り入れていない”と言われる」
(5)「経営からは“”ITは、金食い虫で、何をしているのか分からない”と言われてしまう」
などなど……私たちは、上記のような「テクノロジ以外の悩み」を多く聞きます。
実は、この悩みの根源こそが、IT戦略で言うところの、「コントロールの視点」での施策が無い、もしくは弱いことによって起きている事象なのです。前回は、「コントロールの視点」はデマンド(経営/ビジネス)サイドとサプライ(IT)サイドとの調整をするためのものだと説明しましたが、この調整が取れていないと、そのひずみがこのような声になって現れるのです。つまり、「コントロールの視点」を強化することによって、テクノロジ以外の悩みや、社内のひずみを劇的に減少させることができます。それどころか、CIOやITエグゼクティブが、経営やビジネスに与える影響力を強くすることができますから、真の意味で「ビジネスに貢献するIT」を実現することができるのです。
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