グローバルにビジネスをするためのマインドセット(2/2 ページ)
これだけ聞くと正論に聞こえます。しかし、海外企業と仕事をするときの日本企業「あるある」として、「やりたいことを明確に言わない」「相手先から提案が来ないと進められない」という状況が挙げられます。このケースの場合は、相手方には必要としている実績と能力がありました。明確にこちらのやりたいことを伝えて、その部分に協業範囲を絞って一緒に進められるか、という質問をその場でできると、それだけで物事は前に進みます。
こうした質問を、ミーティングの場で行わずに、持ち帰ったり、または違う協業先を探そうとしたりすると、なかなか進みません。お互いの目標や目的を早期に確認し、達成の余地があるなら、そのやり方を相談し、一緒に提案を作り上げるという考え方と行動、発言が必要です。
「こちらが先に条件を出すのは、情報を出し過ぎ」「買う気(やる気)を先に出したらおしまい」。こんな風に考えているように感じます。まるで市場での買い物で値切り交渉をしているかのようです。こうした考え方だと、グローバルにビジネスをする上で、進め方の大きな課題を抱え込んでしまうことになります。
グローバル(=世界)で仕事をしている人々は、もともと交渉相手(投資先、提携先、取引先)と話をする前に、自分たちがやりたいこと、達成したいことをかなり明確に持っています。その内容や要件は背景や、達成したいことも含めて、相手方とかなり初期の頃からオープンに共有します。双方がどの条件は変えられるのか、何は変えられないのかを議論します。結果的に話が早く進みます。
「双方の会社紹介をして、相手の興味関心も広範に聞きながら、ブレストや情報交換をして信頼関係を作りながら進めたい」という、一見普通の希望が、実は困るのです。興味関心の範囲をある程度明確に事前に示さないと、何を情報交換したり、ブレストしたりするのかが分からないからです。相手からすると、信頼関係を作るにも時間がかかり、それを開始するためには目的や共通の興味の開示が前提になります。
ここでも一歩引いて考えてみると、これも日本国内や社内で行われる普通のミーティングと同じです。要は目的、目標が明確でなく、かつ誰がどんな役割で出ているのかも含めて分からないミーティングが、まだ多いように思います。
4、まとめ:グローバルとは何か?
グローバルにビジネスをうまく進める。そのために必要な考え方、スキルはまだまだあります。今回は、私自身の出張の中で、実際に経験して思い出させてくれたことを素材にして、国、文化についてどう意識したらよいのか、何をどう話すかについて説明し、主に4点共有しました。
- 相手の国(企業)や文化について事前に知る。そして褒めたり質問したりする
- ざっくばらん、具体的に話す
- そのために目的や目標をはっきりさせる
- 気になること、考えが違うこと、分からないことはその場で表明する
こうしてみると、1番目のポイントでさえ、日本で東京の人が九州の人と会ったり、業界が違う人々が会うと、お互いの業界の話から入ったりすることは多々あり、グローバルかどうかに関わらず必要なことです。その他3つのポイントも全て仕事をするうえの基本のように感じます。
むしろ、日本の、特に大手企業ではこうした基本が実践しにくくなっているのではないか、組織内での同調圧力など、ソフト面での日本の企業文化が、スピードやイノベーションなどの競争力向上を阻害しているのではないか、そんな新たな危機感を持ちました。
今回の出張で「我が国では」という言い方は一度も聞きませんでした。それは、海外における企業経営の現場が、もはや企業の発祥地である国やその文化と切り離されていることが多い証左だと思います。「日本企業」のグローバル化という考え方自体が、むしろ日本の特殊性を強調してしまうように感じます。
自分たちの文化、考え方から脱出して、フラストレーションを感じながらも、多様性がある組織の中で自分の考えや、言いたいこと、やりたいことを通していく経験を積み、その結果としてグローバルで通用するビジネスマインドが身につくのではないでしょうか。
著者プロフィール:太田信之
OXYGY 代表取締役 アジアパシフィック代表 パートナー
1966年、東京都出身。国際基督教大学卒業後、ソニーに入社。イタリア駐在時にマーケティング部門でマネジャーを務める。その後、 GE にて事業開発や事業統合の業務を経験。複数のコンサルティングファームを経て、外資系コンサルティングファームの Valeocon Management Consulting のアジア代表に就任。その後、グローバルで知財に強い総合法律事務所、Bird&Birdの経営コンサルティング部門としてM&A により OXYGY を設立、アジアパシフィック 代表を務める。 2019 年から現職。専門セクターは、ライフサイエンス、素材、食品、スタートアップ。会社、事業単位での変革・イノベーションを得意とする(DX、オペレーション・事業モデル・サステナビリティなど)
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