セキュリティ・パートナーの流儀
セキュリティは「使えてなんぼ」 認証との偶然の出会いから22年 - NTTデータ 星野氏(1/2 ページ)
セキュリティ対策と聞いて、面倒な手続きや使いにくいシステムを思い浮かべる人は少なくないだろう。セキュリティを意識すればするほど、仕事はやりにくくなる。そんなイメージがつきまとう。
こうしたなか、セキュリティは「使えてなんぼ」と言い切るのがNTTデータの星野亮氏だ。生成AIの業務活用が広がる今、「AIを使いたいが、セキュリティをどうすればよいか分からない」という顧客の悩みに星野氏はどう答えるのか。星野氏の来歴と、セキュリティに対する流儀を聞いた。
星野亮(HOSHINO Ryo)
――NTTデータ テクノロジーセグメント インフラストラクチャ事業本部 エンジニアリング事業部 統括部長
2004年、NTTデータに新卒入社。認証ソリューション「SecureJoin」の開発・導入をはじめ、セキュリティ関連のシステム開発に従事。2013年から米カーネギーメロン大学に会社派遣で留学し、情報セキュリティ修士を取得。復帰後はモバイル活用基盤の開発・社内導入、セキュリティコンサルティングを担当。2021年から2023年まで日本電信電話(現NTT) IT室でIT戦略策定やITガバナンスの推進に従事。2023年10月にNTTデータへ復帰し、セキュリティコンサルティングの責任者を経て、現在はセキュリティサービスのデリバリ責任者を務める。CISSP、CCSP、TOGAF9-Certified。
「面白そう」で選んだ道、その先で偶然出会った「認証」
星野氏がNTTデータに入社したのは2004年。配属先には自らセキュリティビジネスの部署を希望した。
学生時代にセキュリティの経験があったわけではない。大学時代の友人が先にこの仕事に就いており、「セキュリティの仕事というものがある」というイメージが頭にあった程度だという。では、なぜセキュリティビジネスを希望したのか。職場見学で感じた「面白い人が大勢いる」という印象と、個人情報保護法をめぐる動きから「これから盛り上がるのではないか」という直感だった。
配属されたのは認証グループ。同社の認証ソリューション「SecureJoin」を手がけるチームだった。
「認証ソリューションを希望したわけではなく、偶然の配属でした。ただ、結果的に私は認証が大好きになったので、ラッキーだったなと思います」(星野氏)
クラウドが普及する前、サーバ室のラックに機器を設置し、システムを構築していた時代である。プロジェクトは数人規模のものが多く、期間も数カ月から1年程度。必然的に若手のうちから多くの工程に関わった。構築も試験も、ときには顧客への提案まで担当した。
早くから現場に出してもらえたことが良かったと星野氏は振り返る。認証の仕様を机上で学ぶというより、SecureJoinのカスタマイズや追加開発に携わりながら、製品の構造や設計思想を実務の中で身に付けていった。
そこで出会ったのがシングルサインオン(SSO)だ。SSOとは、一度のログインで複数のシステムを利用できる仕組みのことである。
セキュリティを高めながら、同時に利便性も高められる。そんな仕組みがSSOで実現できるのだと知ったことが、最初の経験としてとても良かったと星野氏は語る。この実感が、その後の仕事観の原点となった。
現場で得た「使えてなんぼ」の感覚に、留学先で裏付けが加わった
転機は2013年に訪れた。
「部長に呼ばれて『留学する?』と聞かれたんです。そんな4文字で気軽に聞くことなのか、と思いました(笑)。結構覚悟がいることだぞと。実は、もともと海外での仕事を志望していたので、良い機会だったんですけどね」(星野氏)
会社派遣で留学する人はMBAの取得を目指すことが多いという。だが本人はMBAにあまり興味がなく、どうせならセキュリティの勉強がしたいと考えた。結果として選択したのは、星野氏がセキュリティ分野の「世界最高峰」と考えていたカーネギーメロン大学である。神戸と米国で1年ずつ学ぶプログラムで、情報セキュリティ修士を取得。英語は「留学に向けてTOEFLの点数は上げていたのですが、実用機会は少なかったので、論文を読み込むのには苦労した」と笑う。
現地で星野氏が出入りしたのが、ユーザブルセキュリティとプライバシーがテーマの研究室だった。ユーザブルセキュリティとは、使いやすさとセキュリティの両立を目指す研究領域のことだ。
「ユーザビリティとセキュリティは、大体の場合トレードオフと言われます。でも、私は認証をやってきたこともあって、セキュリティのためにユーザビリティを犠牲にするのでは意味がない、セキュリティは『使えてなんぼ』ですよ、と思っていたんです。認証、特にシングルサインオンは、ユーザビリティもセキュリティも同時に向上できる仕掛けなんですよね」(星野氏)
研究室では、複雑なパスワードポリシーは本当に有効なのかを、大量の被験者を集めて検証するような実践的な研究が行われていた。現場で培った「使えてなんぼ」という感覚が、学術研究のテーマとしても扱われていることを知った経験だった。
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セキュリティ・パートナーの流儀
高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対抗するには、最新のテクノロジー導入だけでは不十分であり、それを支える高度な専門知見を持った「パートナー」の存在が不可欠です。優れたソリューションの背後にいるプロフェッショナルたちは、どのような想いで顧客に寄り添っているのか。本連載では、第一線で活躍するパートナー個人に焦点を当てて紹介します。
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