食における「利益を生み出す」サステナビリティ(1/2 ページ)

 サステナビリティは既に株式市場における重要な評価指標の一つとなっており、多くの企業が取り組むトピックである。(図1)

図1:2015年を100とした際の企業群のIndex比較

 一方、特に日本企業においては、サステナビリティへの対応は株主や政府に求められる最低ラインをクリアするための「コスト」であり、利益貢献にはつながらないものとして捉えられてきたように感じられる。

 本稿では、日本の食品メーカー・食品小売企業は今、そして今後どのようにサステナビリティを捉えるべきなのかを考えたい。

利益に直結する重要課題となったサステナビリティ

 サステナビリティは既にコストではなく、利益を生み出す投資へと変貌し始めている。

 例えば、ドイツのディスカウントスーパーであるLidlが食品のサステナビリティを示す「エコスコア」を導入した際、エコスコアが高い商品の方が選ばれやすいことを確認(※注1)している。また、欧州を中心に食品のエコスコア表示は浸透し始めており、製品ごとのサステナビリティの可視化は世界でスタンダードとなっていく可能性が高い。

 定量的なサステナビリティ基準を満たせない製品・企業は、株主だけではなく消費者からも選ばれない企業になっていき、利益を失うことになるだろう。

 さらに、COVID-19を経て消費におけるサステナビリティの重要性はますます高まっている。ローランド・ベルガーが2020年に実施したグローバル調査では、34%がCOVID-19 以前に比べてサステナブルな消費かどうかを重要視するようになったと回答している。そして、日本でも29%の消費者がサステナビリティを重視するようになったと回答した。(図2)

図2:COVID-19後、サステナブルな消費かを重視するようになった

 食のサステナビリティは、海外だけではなく、日本でも利益に直結する重要なトピックになり始めているのである。

環境負荷軽減の鍵を握る「原料生産」

 「サステナビリティ」には、GHG排出量減少、土壌・水質汚染防止、フェアトレード、動物福祉等幅広い領域が包含されるが、その多くにおいて、農業や漁業・養殖業といった原料生産領域が削減の鍵を握っている。

 例えば一般的な食領域でのGHG排出量を見ると、7割以上は農業領域に起因する。土地利用を除く純粋な農業生産に絞っても4割が農業由来といえ、加工・輸送・小売等の領域と比して10倍のGHGを輩出している。(図3)

図3:フードシステムにおけるGHG排出量推計

 つまり、原料生産領域は「サステナブルな食」実現のために対応せざるを得ない重要な領域なのである。

 そのため、原料生産領域における新技術への投資は既に過熱しており、例えば使用する水・農薬・土地等を削減することができる「垂直農法」領域での大手プレイヤー・Plentyはウォルマート、ソフトバンク等の投資家らから9.4億ドル以上、InfarmはJR東日本を含む投資家らから6.5億ドル近い資金を調達している(※注2)

印刷する
SNSでシェア

この記事の著者

長谷川千紘
長谷川千紘

早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。国内IT企業におけるマーケティング・広告支援を経て現職。食品他消費財領域を中心に事業戦略立案、買収計画・事業計画・投資評価、マーケティング戦略立案などのプロジェクトに多数従事。

関連記事

ITmedia エグゼクテブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら

ぜひこの機会にお申し込みください。

入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。

入会条件:
上場企業および上場相当企業の課長職以上

※入会は無料です

エグゼクティブコンテンツ

アクセスランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

ITmedia エグゼクティブ SNS

X @itm_executiveをフォロー

インフォメーション

注目情報をチェック

ITmediaエグゼクティブをフォロー