セキュリティ・パートナーの流儀
新幹線にスマホ10台! 説明前にまず自分で確かめる - Zimperium 成田氏(1/2 ページ)
セキュリティツールは、現場から見れば業務を制限するもの、手間を増やすものと映りやすい。だが、Zimperiumでモバイルセキュリティに携わる成田孝弘氏は、技術を「誰かを楽しませたり、喜ばせたり、びっくりさせたりするため」のものと考えている。
その考えは、仕事の仕方にも表れている。資料で説明するだけでなく、常に自分で触って確かめる。新幹線のテーブルにスマートフォンを並べて通信状態をモニタリングし、顧客先ではカバンから機材を取り出してその場で動かす。
なぜそこまで手を動かすのか。成田氏のキャリアから、その仕事観を探った。
成田孝弘(NARITA Taka)
――Zimperium、テクノロジー・エバンジェリスト
1997年にNTTへ入社し、法人営業系のチームのSEとしてキャリアを開始。2002年からセキュリティ領域に携わり、シンクライアント、情報漏えい対策、ゼロトラストなどの分野で、事業立ち上げや顧客・パートナー支援を経験。現在はZimperiumでモバイルセキュリティに携わる。
衛星通信の研究で知った、離れた場所とやりとりする面白さ
成田氏の技術者としての原点は、大学院時代に取り組んだ衛星通信の研究にある。北海道の遠隔地で衛星通信を活用できないかをテーマに、遠隔医療システムなどを研究していた。離れた場所とデータをやりとりすること自体に面白さを感じ、そのままNTTに入社した。
法人営業系のチームでSEを務めていたころ、インターネットが広がり始めた。同時期、企業ではグループウェアの利用も進んだ。もっとも、当時のグループウェアは動作が重いものが多かった。そこで知ったのが、サーバ側の画面を転送して利用するシンクライアントの仕組みだ。遠隔地から仕事ができるだけでなく、端末側にデータを残さないというセキュリティ上の利点にも興味を持ったという。
2002年、成田氏はシトリックスへ移った。製品を売るだけでなく、パートナー企業の技術との組み合わせを考え、実際に仕組みを作る仕事に携わった。簡単な認証ツールを作って見せると、パートナー側がさらに作り込み、別の仕組みに発展することもあった。
「どうしても、メーカー側のほうが詳しいと思われがちな世界かなと思うんです。そうじゃなくて、パートナーさんもアイデアをくれたりして、一緒にコラボして作っていく。そういう組み方をシトリックスで初めて経験しました」
その後、情報漏えい対策製品を手掛ける企業の日本進出に、1号社員として加わった。次に移ったデルでは、シンクライアント関連ビジネスを担当した。扱う製品が変わっても、自分の手で動かして、パートナーと一緒に動きを確かめる仕事の仕方は変わらなかった。
成田氏は「機能を動かしながら、その製品がどういう作りになっているのかを感じ取っていくのが好きなんです」と語る。なぜこのタイミングでログが出るのか。なぜこのサービスはこう動くのか。自分で試しながら作り手の意図を探っていく。
「設計思想が分かってくると、なんだか、会話している感じになります」
製品の振る舞いには理由がある。それを1つずつ確かめていく愚直な姿勢は、このころから変わっていない。
動かして見せなければ、価値は伝わらない
その姿勢がよく表れているのが、モバイル向けのゼロトラスト製品を扱っていたころの話だ。移動中も通信が切れにくいという特徴を顧客に説明すると、「ほんまかいな」と返された。だが成田氏は、すでに自分で確かめていた。
新幹線のテーブルに、通信キャリアやOSの異なるスマートフォンを10台ほど並べ、周囲の視線を浴びながら東京から大阪まで通信状態をモニタリングしたこともあったという。
顧客先でも同じだった。バッテリー、サーバ、ネットワーク機器、スマートフォンを会議室へ持ち込み、「ちょっと今、始めていいですか」とその場で通信を再現する。実際に動かして見せれば、専門用語を並べなくても、何が便利になり、なぜ導入する価値があるのかが伝わるからだ。「いつもカバン大きいですねって言われるんです」。成田氏はそう言って苦笑する。
同じことを、パートナー企業の技術者に対しても行った。冗長化されたシステムなら、本当にケーブルを抜いて切り替わるかを試す。動いているものに手を入れることをためらう若手のエンジニアもいるが、成田氏はその場で促す。
「教科書で読んだことはあっても、実際に手を動かした経験がない人もいます。だったらこの場で試してみましょう、と。そういうところも大事にしています」
セキュリティツールは、日々意識して使うものではない。だからこそ、いざというときにどう動くのか、何が正常なのかを目で見て触って知っておく。その実感を顧客やパートナーと共有するのが、成田氏の技術の伝え方だ。
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セキュリティ・パートナーの流儀
高度化・巧妙化するサイバー攻撃に対抗するには、最新のテクノロジー導入だけでは不十分であり、それを支える高度な専門知見を持った「パートナー」の存在が不可欠です。優れたソリューションの背後にいるプロフェッショナルたちは、どのような想いで顧客に寄り添っているのか。本連載では、第一線で活躍するパートナー個人に焦点を当てて紹介します。
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