デジタル変革の旗手たち
「機械ができることは機械に」── MDM整備でDX推進やAI活用の文化醸成を目指すJR西日本(2/2 ページ)
例えば、共通認識の形成では、駅や路線、線区といった、鉄道業界では当たり前の用語の再定義を行い、各部門の担当者に対し、MDMの目的や効果を丁寧に説明している。またビジネス課題の整理では、MDMは目的ではなく、あくまで課題解決の手段であることを明確化し、データの民主化やDX推進のための基盤であることを訴求した。さらに方針の策定では、基盤方針、共通理解、組織方針のすべてのアクティビティを完了させ、「MDM方針文書」を作成することで、有効性の高いマスタから統一を進めている。
藤村氏は、「MDMを整備するうえで、さまざまな業務部門の担当者にヒアリングしながら進めることが必要でした。さらにMDMを実現するためにはコストもかかるので、経営層に目的とメリットを理解してもらうことも重要でした」と話している。
重要なのは、泥臭く、根気よく、啓もう活動を続けること
MDMの整備は非常に時間のかかる作業です。藤村氏から引き継いだ新沢氏は、今後の肝になる取り組みを次のように話す。
「共通認識をつくるために、どのようにさまざまな部門と合意形成を取っていくかが重要になると考えています。現在は、ヒアリング等の担当者ベースでのコミュニケーションが中心ですが、今後は、部門を管理する意思決定者との合意形成が必要になります。これは私たちイノベーション本部だけでは、決して成し遂げることができないことですので、情報システム部門などの各部門と協力しながら、今後の更なるデータ活用を見据えたプロジェクトとして進めていくことが重要だと思います」(新沢氏)
MDMの整備を実現することで、基幹システムのモダナイズが可能になり、さらにデジタル化の加速が期待できる。また、これまで深堀できていなかったビジネス課題を整理・共有するきっかけができ、データマネジメントの方針が具体的になるという。
「他社のMDMにおける推進活動の事例を参考にするため、セミナー等での情報収集を行っていますが、ほとんどの会社がMDMの整備には大変苦労しているという話をよく耳にします。重要なことは、地道に泥臭く、根気よく、MDMの啓もう活動を続けていくことだと思います」(新沢氏)
MDMを整備することで、基幹システムのモダナイゼーションも進むが、さらに業務システムでのAI活用も期待できるという。社内におけるAIの活用について、やはり鉄道DX部でMDMに取り組む茨木氏は、「業務システムでAIを活用していくためには正しいデータが必要であり、MDMの整備が不可欠になります。
社内版の生成AIを使ったり、ローコード開発プラットフォームでAIを活用する仕組みを内製化したりといった風土は徐々に確立されています。使う側の意識が変われば、MDM整備の必要性も理解されると思っています」と話している。
次世代改札システムにより利用者に新たなサービスを提供
既に触れたが藤村氏は、現在、施設部 機械課に異動し、自動改札やサイネージシステムといった駅機械設備のソフトウェア開発や企画業務などに取り組んでいる。例えば、次世代改札システムの開発がその1つだ。改札システムを刷新することで、機器コストや保守コストを削減できるほか、JR西日本が発行する交通系ICカード「ICOCA(イコカ)」を、より快適かつ便利に使って頂く事や、ICOCAのご利用者に新たなサービスを提供することが可能になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
デジタル変革の旗手たち
この記事の著者
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
第50回:なぜ「優秀なマネジャー」ほど経営に嫌われるのか
-
2
ITmedia エグゼクティブ勉強会スケジュール
-
3
「CISOは1人の経営者たれ」――ログの先の人を思う、LayerX CISO 星氏
-
4
「セキュリティは事業を活かす出汁、責任者はCIMOで目指せ」 - JTB 椎野氏
-
5
味の素社が挑む“dX”とAI駆動開発――“企画・開発・営業ができる人財”が新規事業を加速する
-
6
「人間洗濯機」が高齢者施設に 福祉の現場に万博技術導入 人手不足解消や産業成長に期待
-
7
スキルの向上だけでは成長は望めない――より重要になる「成長マインドセット」とは
-
8
重要文化財の弁財天像 3Dデータ化で確実に継承へ 「将来に残したい」神奈川・江島神社
-
9
「レッドガス」時代の羅針盤【第三章】従来型グローバルサプライチェーン設計思想からの脱却
-
10
「その100時間は、何も生み出していない」――認知科学者・堀田創氏が斬るリーダーの"見えない疲れ"
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー