免疫から脳へ、未知の分野に挑み続ける研究人生 利根川進さん
日本人として初めてノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進さんが死去した。「何をすべきかを決める基準は、自分が取り組む科学的な問題が面白いかどうか、自分が興味を持てるかどうかだ」。2022年、所属していた米マサチューセッツ工科大(MIT)ピカワー学習記憶研究所のニュースレターに掲載されたインタビューで、利根川さんは、自らの研究哲学の一端を明かしていた。
免疫の鍵を握る抗体の仕組みを遺伝子レベルで解明した利根川さん。抗体は、体内に侵入してきた異物が持つ抗原と結合して体を守る。それぞれ特定の抗原と抗体が結合するため、体内では膨大な種類の抗体が作られることになる。限られた数の遺伝子から、どのようにして多様な抗体が生まれるのかは、100年来の謎とされた。
これに対して利根川さんは、遺伝子の断片がランダムに組み合わされることで、無数の抗体ができることを発見。ノーベル賞の選考委員は当時、「100年に1度の大研究」と称賛したという。
高校時代に好きだった化学を専門的に学ぼうと京都大理学部化学科に入ったが、大学院で分子生物学に転向して米国に留学した。免疫分野は門外漢だったが、米国のビザが切れてやむなく籍を置いたのがスイスのバーゼル免疫学研究所で、抗体の研究に取り組んだ。
MITに移籍後は、脳科学の研究に着手し、記憶に関する革新的な成果を次々に発表。鬱病やアルツハイマー病などの治療法につながる可能性があるという。
13~17年ごろにMITで利根川研究室に在籍していた奥山輝大・東京大教授は「サイエンスに人生のすべてをささげ、亡くなる瞬間まで科学者だった。世界がどう動いているのかをひもときたいと、研究が楽しくてたまらない様子だった」と振り返った。
新しい分野に踏み込むことを恐れず、好奇心と直感に従って挑戦を重ねた研究人生だった。(松田麻希)
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