仕事で差がつく「伝わる話し方」5つの基本
「話を聞いてもらえない」のは、内容のせいとは限らない――伝わる人が押さえる第一印象
「きちんと説明したはずなのに、なぜか部下の動きが遅い」「会議で発言しても、いまひとつ反応が薄い」「同じ内容を話しているのに、あの人の話には自然と耳を傾けてもらえる」仕事をしていると、そんな経験はないでしょうか。
もっと分かりやすく説明しなければと考える人も多いでしょう。しかし、相手に話を聞いてもらうために大切なのは、話の内容だけではありません。
私はアナウンサーとしてテレビやラジオの現場で伝える仕事を経験し、現在は企業研修の現場でビジネスパーソンの話し方を向上させる講師をしています。
そこで多くの方を見て感じるのが、「何を話すか」には気を配っていても、「どう見えているか」まで意識している人は意外に少ないということです。
伝わる話し方を身に付ける第一歩として、まず見直してほしいのが「第一印象」です。
実は、話し始める前から、コミュニケーションは始まっているからです。
例えば、会議で発言を求められた場面を想像してみてください。
1人は、資料やパソコンに目を落としたまま、硬い表情で説明を始める。もう1人は、背筋を伸ばし、顔を上げ、参加者とアイコンタクトしながら話し始める。
まだ2人とも、それほど多くを話していません。それでも、聞き手が受ける印象は違うのではないでしょうか。
会議での発言や部下への指示、上司への報告など、仕事では人に伝える場面が数多くあります。そうした場面では、間違えないように話そう・漏れなく説明しようと、つい言葉ばかりに意識を向けてしまいます。
しかし、相手は言葉だけでなく、表情、姿勢、視線なども含めて、その人の話を受け取っています。つまり、話し始める前から「伝える」は始まっているのです。
第一印象は「見た目を良くする」ことではない
会議の前に資料を確認する。部下に指示を出す前に、伝える内容を整理する。上司への報告内容を頭の中で組み立てる。どれも大切な準備です。
ところが、どんな表情で話すか、相手からどう見えているかまでを考え準備している人は、それほど多くありません。それは研修の場でもよく感じることです。
私が行っている研修で、トレーニング前に受講生の皆さんに話してもらうと、本人は一生懸命話しているのに、「表情が硬く見える」「下を向いている時間が長い」「自信がなさそうに見える」といったことがあります。
興味深いのは、本人にはその自覚がないケースが多いことです。自分では普通に話しているつもりでも、聞き手から見ると違う印象になっていたことに驚かれるのです。
このように、自分が思っている「見え方」と、相手が受ける印象には、ずれが生まれることがあります。だからこそ、自分が相手にどのような印象を与えているのかを意識することが大切です。
ただし、ここでいう第一印象は、単に笑顔をつくる・身だしなみを整えるといった、見た目を良くすることではありません。
大切なのは、相手がこちらの話を受け取りやすい状態をつくることです。
例えば、部下に仕事を依頼するとき、パソコンの画面を見たまま伝えるのと、一度相手に身体の向きを合わせ視線を向けて伝えるのとでは、同じ内容でも受け取られ方は変わります。
また、会議で新しい方針を説明するときに、うつむいたまま話していれば、本人にそのつもりはなくても、やる気がないように見えることがあります。
表情や姿勢、視線も、話の内容と一緒に相手へ伝わっているのです。
では、具体的に何を意識すればよいのでしょうか。
第一印象で押さえたい「表情・姿勢・視線」
まず確認してほしいのが、「表情」「姿勢」「視線」の3つです。
1.表情――「真剣」と「無表情」は違う
仕事の場では、真剣に話そうとするほど表情が硬くなりがちです。
本人は真面目に話しているだけなのに、相手には今日は話しかけたら良くないかも、機嫌が悪いのかなと受け取られてしまうこともあります。
だからといって、常に笑顔でいる必要はありません。大切なのは、話す内容や場面に合った表情になっているかです。
例えば、部下から相談を受けるときには、相手が話しやすい表情を意識する。重要な方針を伝えるときには、その内容に合った表情で話す。といったことです。
まずは、自分が普段どのような表情で人と話しているのかを意識してみましょう。
2.姿勢――話す前に「体の軸」を整える
猫背になっていたり、話しているときに体が左右に揺れていたりすると、本人にそのつもりがなくても、話の説得力が弱くなってしまうことがあります。
そうならないよう会議で発言するときや人に説明するときは、背筋を伸ばし、体の軸を意識します。
オンライン会議でも同じです。画面に顔を近づけ過ぎたり、椅子に深くもたれたりせず、画面に映る自分が相手からどう見えているか、一度確認してみましょう。
姿勢を整えることは、見た目だけの問題ではありません。姿勢が整うと、声も変わります。
3.視線――「誰に伝えているのか」を忘れない
会議で資料ばかり見ている。パソコンの画面を見たまま部下に指示を出している。オンライン会議では、画面上の資料ばかり見ていて参加者を見ていない。
こうした状態では、「自分に向かって話してくれている」という感覚が相手に伝わりにくくなります。
「伝える」とは、ただ言葉を発することではありません。「誰に伝えているのか」を意識することが重要です。
特に部下への指示や説明では、相手を見ることで反応を確認できます。理解できているのか、疑問がありそうなのか。それを見ながら説明を補ったり、話すスピードを変えたりすることもできます。
自分の話し方は「録画」するとよく分かる
では、自分が相手からどう見えているのかを知るには、どうすればよいのでしょうか。
簡単にできる方法が、スマートフォンなどで自分が話している姿を撮影することです。
30秒程度でも構いません。会議での発言や、部下に仕事の説明をする場面を想定して話し、後から映像を確認してみてください。
その際、「何を話したか」ではなく、「表情はどう見えるか」「姿勢は崩れていないか」「視線はどこを向いているか」という観点で見てみます。
自分の姿を見るのは、最初は少し恥ずかしいかもしれませんが、自分では気付かなかった癖を客観的に知ることができます。
アナウンサーも、生放送終了後には自分が出演した映像を見て振り返ります。
すると自分ではできていると思っていたことが、映像を見るとできていない。反対に、自分では気にしていたことが、他人から見るとそれほど気にならない。映像で自分の姿を客観的に見ることで、初めて気付けることがあります。そうした気付きが、伝え方を改善する第一歩になるのです。
第一印象は「準備」で変えられる
「人前で話すのが得意な人は、もともと自信があるからできる」と思われることがあります。しかし、伝わる話し方は、限られた人だけが持つ才能ではないのです。
表情を整える。姿勢を整える。相手を見る。
一つ一つは、とても基本的なことです。
大切なのは、「何を話すか」だけでなく、「相手にどう届いているか」まで考えること。
次に会議で発言するときや、部下に何かを伝えるとき、話す内容を確認したあと、もう1つだけ確認してみてください。
「今の自分は、相手からどう見えているだろう?」
そこまでが、伝えるための準備です。第一印象を整えることは、見栄えを良くするためではなく、相手がこちらの話を受け取りやすい状態をつくるためのものです。
その上で、実際に話し始めたときの伝わり方を左右するのが「声」です。
次回は、声が小さい、早口になる、一本調子になるなど、「伝わらない」を生む声のNG習慣と、聞きやすい声をつくる基本についてご紹介します。
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仕事で差がつく「伝わる話し方」5つの基本
ビジネスで必須の「伝える力」だが、「うまく伝わらない」と悩む人は多い。本連載ではアナウンサーとして培った「伝える技術」を、①第一印象②声③話の構成④間・強調⑤視線・ジェスチャーの5つの基本に分けて解説する。必要なのは特別な話術ではない。よくある失敗例と改善策を交え、日々の仕事ですぐ実践できる「伝わる話し方」を紹介。
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