【第18回】新入社員が非常識な質問をするのは当然だミドルが経営を変える(1/2 ページ)

4月を迎え、今年も多くの新卒社員が企業に入ってきた。彼らが口にする無邪気な質問に頭を悩ませる上司も多いだろう。しかし、改めてじっくりと耳を傾けてみると、決して見当外れなことばかりを言っているわけでもないのだ。

» 2009年04月09日 08時15分 公開
[吉村典久(和歌山大学),ITmedia]

 この年度末、勤務する大学である大役を初めて任されることになった。各学部から複数名が選ばれ数日間、重要な務めを果たすこととなった。ただし業務内容は、マニュアルにある作業手順に従って淡々とこなすものだった。

 これもお仕事と、マニュアルに従って作業を進めていたのだが、途中で「なぜ、こんな手順があるのだろうか」という疑問がわいてきた。どう考えても不必要な手順、時間の無駄と思える決まりごとがマニュアルにあったからだ。わたしのみならず、ほかの先生方も同じ疑問を持っていた。「なぜ、こんな決まりごとがあるのでしょうか」、「昔、何かあったのか」。事務方の若手も含め、結局答えは分からずじまいだった。

どれも似たようなトップ訓示

 4月になった。新聞紙面には入社式におけるトップの挨拶が掲載されている。大手数社のトップ訓示であり、語られた全文が掲載されているわけでもない。それ故、トップの挨拶を下書きしているミドルの方々には申し訳ないとも思うが、「わが社を取りまく経営環境は厳しい。この難局を乗り切ることが会社のみならず新入社員の成長にもつながる。ともに頑張ろう」という内容ばかりだった。具体的に書き出しを見ると、「置かれている環境は厳しいが」(大手電機メーカー)、「景気後退局面を迎え、建設業を取り巻く環境は激化の一途をたどっている」(大手ゼネコン)、「きわめて厳しい時期に入社したことに」(大手非鉄金属メーカー)、「われわれは絶えず激変する環境の下で経営しているが」(大手飲料メーカー)といった内容である。

 新入社員の「新」の部分に期待する挨拶も目に付いた。例えば、三菱電機は「今をピンチではなく実力が試されるときととらえ、将来に向けた大きなチャンスとするために、皆さんの新鮮な感性、豊かな発想、若々しい行動力に期待する」、大成建設では「意欲的に挑戦する社員には協力を惜しまない。若々しい感性とあふれるバイタリティーで新しい風を吹き込んで欲しい」としている。

業界の常識は、新入社員にとっては非常識

 前回の連載「新入社員すべてをパンダ型だと思い込むな」では、「新人類と呼ばれるような世代を面白がり、そこから学べることはないものかと思案してみる。(中略)社内の異世代の存在に興味を持ち、刺激を受けてみるのもいかがだろうか」と締めくくった。今年の新入社員は「エコバッグ型」だという 。パンダ型であれエコバッグ型であれ、新入社員は各社の色に染まっていないという点は変わらない。何にも染まらず真っ白な「新」の部分をぜひ生かしてもらいたい。

 各社のトップが語るほどの大それたお願いをするつもりはない。大学教員としてのわたしからのお願いは、新人の素朴な問い掛けに耳を傾け、わが社、わが部、わが課の仕事、アフターファイブでの付き合いも含めて、自分のやり方を自問自答していただきたい。ビジネスの現場や社内においては、常識と言われるものがあるが、長く身を置いていればいるほど、それが独特なものだと気付かなくなってしまう。

 例えば、あなたが課長として、会議用資料の作成の手伝いを新入社員に依頼したとしよう。会議用資料はホッチキスを留める位置まで細かい決まりごとがあり、厳守することが求められているとする。新入社員の口からは「なぜ、ここまで細かな決まりごとがあるのか。資料作りで一日が終わってしまう。時間の無駄ではないか」と、ため息が漏れてくるかもしれない。新入社員が素朴な質問をしてしまうのにも訳があるのだ。

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