オリンピック選手の自己管理能力がいかにすごいか小松裕の「スポーツドクター奮闘記」(1/2 ページ)

4年に1度のオリンピックに照準を合わせて最高のコンディションを作り上げることが、実に大変なことであるかは容易に理解できるでしょう。今回は、それを可能にする選手たちの自己管理能力に迫ります。

» 2012年06月13日 08時00分 公開
[小松裕(国立スポーツ科学センター),ITmedia]

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 ロンドンオリンピック開幕まであとわずかとなりました。オリンピックへの出場権をかけた予選大会や、国内での代表選出のための試合も続いています。

 代表の選出方法は競技によってさまざまです。例えば、競泳は完全な一発勝負。4月に行われた日本選手権のみが代表選出の唯一の選考会となりました。いくら力のある選手でも、たった1つの選考レースで自分の力を発揮しなければオリンピック選手にはなれないのです。そんな中、きちんと実力を発揮して4大会連続のオリンピック出場を決めた北島康介選手は本当に素晴らしいと思います。

 そもそもオリンピックは4年に1度です。レース当日、いかにしてコンディションを最高の状態にもっていくかはとても大事なことです。試合直前にちょっと風邪をひいただけでも、実力をフルに発揮することができません。オリンピックで連覇するということがいかに偉大なことかが分かります。

 オリンピックやその選考レースに万全なコンディションで臨むには、カラダもココロも最高な状態でいるための「自己管理能力」が必要です。それをできる選手がトップアスリートということなのでしょう。

藤原選手の自己管理能力

 ロンドンオリンピックのマラソン代表となった藤原新(あらた)選手は日ごろ私の勤務している国立スポーツ科学センター(JISS)を拠点に練習しています。彼がオリンピックを決める大会となった東京マラソンの前もちょくちょく話をしました。会社を辞め、スポンサーもいない中、一人で大きな目標に向けてひたむきに頑張っていた姿をよく知っています。

 藤原選手と接していて本当に感心するのは、我々にはとても真似できない「自己管理能力」です。自分の身体のことをよく理解していて、それを常に医学的、科学的見地に立って客観的に評価しているのです。彼は時々、身体の定期チェックのために診察に来ます。血液検査も、すべて自分で検査項目まで考えて、私は言われた通りに検査指示を出すだけです。「あまり数字だけに惑わされちゃダメだよ、自分の感覚も大事だよ」という私のアドバイスもきちんと理解しています。

 「体の状態を、常にデータとしてきちんと記録しておきたいのです」という彼の言葉を聞きながら、余裕や自信を感じました。「きっとやってくれるだろうな」と思っていました。

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