トレンドの変化はあまりに早い。単純計算で2013年と2014年の一年間でAmazonユーザーの約20%がスマートフォン経由へと移行した。数年で全く異なる世界が創出している。この業界のスピード感と自分のスピード感にズレが広がりだしていないだろうか?
リアルの世界のメーカーや小売がデジタルチャネルやデジタルメディアの活用について真剣に取り組みだしてから10年が経とうとしている。
その間、いくつもの技術やサービスが開発された。ソーシャルメディアが生まれ、その雄であるFacebookの月間利用者数は13億人(2014年10月)、日本におけるスマートフォン経由のインターネットショッピングの訪問者数はAmazonで昨年度対比+約60%、楽天で+約40%という驚異的な上昇を示し、いずれも全体の60%近くまで急上昇、PC経由を上回った。(2014年度(出所:Nelsen))また10代、20代のメディア接触時間ではテレビ(ラジオ) を既にスマートフォン(携帯電話)が大きく上回っている。(図A参照)
この数値の肌感覚を持つことはデジタルの世界にどっぷりと浸からないと難しいのではないだろうか。
世界のインターネット普及率を29億人(2014年(出所: ITU World Telecommunication)) とすると、実に年齢問わず世界中の人々の2人に1人がFacebookを利用していることになる。日本でも携帯電話での買物がパソコンを追い越している現在、若年層に対してのユーザー接点はパソコンではなく今やi Phoneなどのスマートフォンへと明らかに移行し、ここを疎かにしては大部分の機会を逸してしまうことになる。
トレンドの変化はあまりに早い。単純計算で2013年と2014年の一年間でAmazonユーザーの約20%がスマートフォン経由へと移行した。数年で全く異なる世界が創出している。この業界のスピード感と自分のスピード感にズレが広がりだしていないだろうか? 下の問いにあなたなら何と答えるだろうか。
「自室に一人でいる時、社内情報を知りたいと思ったらどのくらいのリードタイムで直属部下からの回答を要求しますか?」
電話しても多忙な部下は離席している。メールを打っておく。夕方それを見た部下が他部署に問い合わせ、その回答が翌朝来て報告を受ける。これが昔の形だとすると、デジタルプレイヤーなら同じ問いに数秒での応答を求めるだろう。経営層含め、社員は同時に複数の人間とのやりとりをメッセンジャーアプリを介して即座に処理する。携帯電話なら一人の対応しかできないが、メッセンジャーアプリなら回答優先度を判断しながら同時に複数人に対応ができる。常務レベルの経営陣もミーティングの際に同時に十人近い人間と個別の1:1 の会話を進行しているような状況だ。
この時間感覚と情報処理生産性がデジタルだ。永続的な競争優位性は存在せず、常に走り、常に進化させ続けるスピードが唯一の競争優位性となる。裏を返すと流動的であり、やり方次第で一気にプレゼンスをあげる機会がある。
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明治学院大学 経済学部准教授